ビルの電気室でPTヒューズを素手で抜こうとして感電
業種 | ビルメンテナンス業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 電力設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 感電 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 忘却 | |||||
発生要因(管理) | 通電中の電気装置の |
No.1116
発生状況
この災害は、ビル地下1階の電気室において、全館停電で変電設備の点検、清掃等の実施中に発生したものである。当日は、午前8時から午後9時までの間にビルを全館停電し変電設備の点検、各種測定、清掃を技術員5名で行なうことになっており、また、当日は午前7時30分から午後5時までの間に別の会社が高圧引き込みケーブルの更新工事を行なうことになっていた。
午前6時30分から停電作業に入り、午前中は技術員4名が2班に分かれて各階の分電盤の絶縁測定、照明測定等を実施、責任者は別の会社の高圧ケーブル交換作業の立ち会いを行なった。
午後は、トランスの絶縁油試験、別の会社のケーブルの耐圧試験が行なわれ、午後3時前に復電作業が行なわれた。
続いて、保護継電器試験の準備に入ったとき、被害者が高圧受電盤の扉を開け、左手素手で筺体枠をつかみ、右手で試験のため取り外す必要があったPTヒューズを素手でつかんだ。
しかし、PTヒューズは通電中であったため、被害者が「おー危ない」と言いながら飛ぶように倒れ込み、、約1時間後に死亡した。
原因
この災害は、ビルの地下1階にある電気室において保護継電器試験の準備段階で通電中のPTヒューズを素手で取り外そうとして感電死したものであるが、その原因としては次のようなことが考えられる。電力会社から供給された高圧電流は、断路器→PTヒューズ→計器用変圧器の経路で流れ、VTで高圧の6,600Vから低圧の110Vに降圧されてDGRに流れるようになっている。
試験は、DGRに種々の試験電流を流して行なわれるが、試験電流がVTを逆流しないようPTヒューズを抜き取っておくことが必要であることから、被害者は充電の有無を確認せず、その行為を安易に実施した。
ところで、当日の被害者の属するビルメンテナンス会社の作業計画とケーブル交換を行なう会社の作業計画書とを対比してみると、停電作業の途中で復電することについて両者の計画は一致していなかった。
また、ケーブル交換の作業が予定よりもかなり早く進行しているが、それに伴う両者間の作業の再調整も行なわれていなかった。
対策
この災害は、ビルを全館停電しての変電設備の点検、清掃等の作業中に作業の責任者でもある被害者が、通電中のPT(ポテンショントランスフォーマー)のヒューズを素手で抜こうとして感電死したものであり、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 遮断器、開閉器等の誤投入等災害要因への対策を盛り込んだ正確な作業計画の作成
2 充電電路を停電して作業を行なう場合の作業指揮者の職務の励行
3 パイロットランプ等による無負荷であることの確認
4 2重安全のための絶縁用保護具等の使用
5 いわゆるヒューマン・エラーによる不安全行動の防止、及び電撃危険に関する再教育
6 現場作業での安全に着目した作業マニュアルの作成と見直し