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この災害は、漁港修築事業現場において発生したものである。 工事現場では浚渫船による港内の浚渫作業を行っていた。使用した全旋回浚渫船(通称「グラブ浚渫船」)である。 当日の朝、グラブ浚渫船団(グラブ船、土運搬船、揚錨船各1隻)は埋立地係留場所より300m離れた浚渫箇所に曳航した。 浚渫作業のグループはグラブ浚渫船を設置完了後、前日の浚渫箇所を確認しオペレータに指示して浚渫作業を10〜12回行った。 被災者の甲板作業員は待機状態であったが、自主的に上部旋回体の右舷下方にあるウインチガードを塗装していた。この時、旋回してきた上部旋回体の後方下部にあるカウンターウエイトとウインチガードパイプの間に首をはさまれて頸椎を損傷し死亡した。
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災害発生の前日、被災者(甲板作業員A)は同僚作業者と共にグラブ浚渫船左舷のウインチガードに昇って同様のペンキ塗り作業を行った。左舷にあるウインチガードは浚渫作業による旋回方向とは逆であったために上部旋回体の旋回範囲外であった。そのためウインチガードに昇って塗装作業を行ってもカウンターウエイトとウインチガードにはさまれるおそれはなかった。 これに対して、災害当日は同船の反対側である右舷に昇って同様の塗装作業を行ったところ本体のカウンターウエイトとウインチガードパイプの間に首をはさまれて被災したものである。 被災時には目撃者や同僚作業者がいなかった。また、本作業は被災者の独自の判断によるものであった。状況から推察すると、被災者は前日同様に同船本体の右舷が旋回範囲外と勘違いをしてのウインチガードパイプに昇ったために被災したものと考えられる。
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多くの建設工事に様々な機械が導入されている。建設工事に関わる作業が機械化されることによる恩恵は多い。例えば、施工速度のアップや施工品質の安定化、また従来困難だった大規模工事が実施可能となる場合もある。これに加えて、危険な作業や危険な個所での作業を人間に変わって機械が行うことがあげられる。 一方、機械化に起因した災害も発生している。高度な建設機械が開発されて様々な作業が自動化されたり安全化されている。しかしながら、未だ全ての過程を機械が人間に代わって作業する、いわゆる無人化機械システムは少ない。そのため、機械と人間が共存して作業を行う状況が多く存在する。その状況において、両者が接触することに起因する災害が発生する。 災害原因でも述べたとおり、グラブ浚渫船の上部旋回体が稼働しているにもかかわらずウインチガードパイプに昇って作業を行っていたことが直接の原因であるが、同種の災害を防止するためには次のような対策の徹底が望まれる。 1) 建設作業現場の安全管理体制の整備 2) 労働者に対する安全衛生教育の徹底 3) コミュニケーションの改善 4) 機械設備等の安全化と安全点検の実施
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