アーク溶接作業中、溶接棒の取替時にホルダー充電部に接触して感電
業種 | その他の金属製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | アーク溶接装置 | |||||
災害の種類(事故の型) | 感電 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置がない | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.1061
発生状況
この災害は、交流アーク溶接機により縦2.5m横2mの鉄製窓枠を溶接組立中、作業者が溶接棒を取替える際、溶接棒ホルダーの充電部分に接触し強度の電撃を受けて死亡したものである。被害者の属する事業場は、建築用鋼材を加工する工場であり鋼材の切断、曲げ、溶接等が主たる業務であった。
災害発生当日は事業場として盆休み期間中であったが、民家取付け用の前記窓枠の完成を急がれていたため被災者のみが午前10時頃出勤し、事務所で事業主と打合わせをした後工場に入り10時30分頃から単独で窓枠の溶接組立作業を行っていた。
正午頃、昼食になるので事業主が工場に行ったところ、土間にある溶接用作業台(H形鋼)に胸部を当て、うつ伏せに倒れている被災者を発見した。被災者の右胸部には通電状態の溶接棒ホルダーが乗っており、事業主が被災者を抱きかかえ当該場所から直ちに引離したが、その際、ピリピリと電気が通じているのが感じられた。
被災者は既に意識がなく、かけつけた救急車で約30分後病院に搬送されたが、当日午前11時30分頃感電死したものと推察された。
原因
この災害は単独作業中に発生したので目撃者がないが、被災者を助けるため事業主が本人を抱きかかえたとき汗によって濡れた衣服を通じてピリピリと電気が流れていることが感じられていたこと及びうつ伏せにたおれていた被災者の胸部には通電状態の溶接棒ホルダーが乗ってことから推察すると、本災害の発生原因としては次のことがあげられる。(1) 被災者は溶接棒を取替える際、身体の一部が母材側のC形綱又は溶接用架台のH形綱に接した状態で、溶接棒ホルダーの充電部に誤って手を触れたか、溶接棒の装着完了したホルダーを持ったとき溶接棒先端が体に触れたため、電路が構成され電撃を受けて倒れた。
(2) 災害当日は31℃を超える暑い日であり、工場内は窓を開けていない状態で相当むし暑く、被災者は水に浸した位に濡れていた。
この状態で前記感電電路が構成されてた場合溶接機の二次無負荷電圧で人体内に生ずる電流は100mmAを超えることも考えられ電撃の度合は相当大きいものであった。
(3) 本溶接機を使用するに当たり、自動電撃防止装置が使用されていなかったため感電時に溶接機の二次無負荷電圧が直接にかかってしまった。
対策
アーク溶接作業は、通常人体の接置条件が良好な状況下で、露出充電部である溶接棒及びそのホルダーを手に持って行っているので、これに接触して感電する危険性が非常に高いものである。また、本件災害の如く衣服湿潤中の感電は特に重篤災害となり易い。このため同種災害の防止に当たっては、次のよう対策の徹底が望まれる。1 アーク溶接機等設備の安全化 | |
(1) アーク溶接機の自動電撃防止装置 (2) 電源開閉器及びアーク溶接機の漏電しゃ断器装着及び接置施行 (3) 絶縁形ホルダーの使用 | |
2 保護具使用等の徹底 | |
(1) 革手袋、前かけ、足カバーの使用 (2) 乾燥した適正衣服の着用と着替えの励行 |
4 安全作業標準の作成