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この災害は、医薬品中間体等の製造工場で発生したものである。 その製造作業は、反応、熟成、分析及び脱ガスに大別され、災害は脱ガス作業中に発生した。脱ガス作業は、反応容器である6kl缶での副生成ガス、ホスゲンガス等を取り除くものである。 災害発生当日は、製造責任者のもとで製造課員2名が、前日から行なわれていた脱ガス作業を引き続き行っていた。 前日の作業の一部である6kl缶ジャケット内の冷却用エチレングリーン水溶液の拓取りが不十分であったので、これを除去するためスチームで洗浄する作業を、午前中から行なっていた。 これが一つの原因となり、本体缶内の温度が上がり、また攪拌を行なったことなどで、異常化学反応を引き起こし、午後5時過ぎ頃、液面の泡立ちが通常より激しくなった。 そのとき、製造責任者は現場から離れていたため、製造課員は減圧バルブの操作などをして対応していたが、17時35分頃に6kl缶の内圧がいっそう上昇し出し、危険を感じ避難した。 その後間もなく6kl缶のふた板がクランプから外され破裂し、飛散した生成物等により、5名が被災し、うち1名が死亡した。
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この災害の発生原因としては、まずベンジルクロロホーメートの生成過程において異常化学反応の発生を予期していなかったことがあげられるが、これに関連で次の事項等を指摘することができる。 1 異常化学反応により、6kl缶内の圧力が急激に上昇し、缶の耐圧能力をこえたこと このさいに、缶の破裂に至る前に缶内部の圧力を外部に逃がすための安全弁、破裂板等の←安全装置の措置を講じていなかった 2 異常化学反応が発生したさいの対処方法についての適切な作業マニュアルが作成されていなかったこと 即ち、製造に携わる作業者は、十分な知識を有していなかったので、適切な対応ができていなかった 3 間接的な原因としては、関係作業者に対するきめ細やかな安全衛生教育の実施ならびに生産設備の安全確保のための指揮系列、責任分野の明確化等について組織的な取組みがなされていなかったこと。
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この災害は、化学物質の異常反応発生が直接原因となったものであるが、同種災害の再発防止のためには本質安全の究明から総合的な安全衛生管理体制の整備が必要となる。 そのためには次の事項についての対策の徹底が望まれる。 (1) 原材料となる化学物質の種々の環境条件のもとにおける状況について安全確保をしたうえで、作業標準(マニュアル)を作ること。 (2) 異常化学反応時等反応缶の圧力が上昇するおそれのある場合には、安全弁またはこれに代わる安全装置を備えること。 (3) 定期的な安全点検を実施すること。 (4) (1)に述べた異常化学反応の発生時の作業標準が確実に実施されるように安全衛生教育を徹底すること。 (5) 安全衛生管理を組織的かつ積極的に推進するための体制を確立すること。
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