エレベーターの巻き上げ用ワイヤーロープが切断し、搬器とともに落下
業種 | その他の化学工業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | エレベータ、リフト | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 組立、工作の欠陥 | |||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) | つり荷、バケット、搬器に乗る |
No.1044
発生状況
この災害は、プラスチック加工工場付属の倉庫において発生したものである。この工場においては、プラスチック成型機5台を設けて、合成樹脂シートを成型加工し、「カップ麺」用等の容器を製造している。また、工場に隣接して2階建ての倉庫を有し、原材料、製品、製品梱包用材等を保管していて、これらを揚げ降ろしするため荷物用エレベーターを設置している。
災害発生当日、被災者は、午前8時から昼休み1時間をはさんで午後2時20分ごろまで、同僚労働者と二人で1台のプラスチック成型機を用いて「カップ麺容器」の成型加工作業に従事していたが、この製品梱包用ポリ袋が不足しそうになったため、倉庫に取りに行った。午後2時30分ごろ、同人は倉庫2階に上がって、紙袋詰めされたポリ袋(重量2kg)をかかえてエレベーターに乗り込み、ポリ袋を搬器の中央付近に降ろそうとしたところ、搬器を吊っていた電動ホイストの巻上用ワイヤーロープが破断した。
このため、同人は搬器とともに約4メートル下方の1階エレベーターピットまで落下し、左足踵骨々折の重傷を負ったものである。
原因
この災害の直接原因は、荷物用エレベーターの搬器を吊っていた電動ホイストの巻上用ワイヤロープが破断したこと及び搬器の「非常止め」が設けられていなかったため、搬器とともに約4メートル下方の1階エレベーターピットまで落下したことによるものである。ワイヤーロープの破断は、乱巻きを繰り返して摩耗と素線切れが生じ、荷重に耐えられなくなったために起こったものであるが、この乱巻きの原因は、搬器の重心とホイストの中心がずれていたこと及びガイドレールに「ねじれ」があったことによるものと考えられる。当事業場の過去における点検記録でも、ワイヤーロープの摩耗、乱巻きが指摘されており、このエレベーターは乱巻きを生じやすいものであった。
安全装置としての搬器の「非常止め」については、エレベーターの構造規格上不可欠であるが、これが設けられていなかったため、搬器が落下するときその降下を制止することができなかったものである。
この災害の間接的な原因としては、エレベーターの製造業者及びエレベーターを利用する事業者のいずれもが、このような基本的、かつ法定事項である対策を知らず、これを怠っていたことが指摘される。
対策
近年、工場で使用するエレベーターによる災害は減少しているが、いったん起こると重大な結果を招くおそれがある。また、過去の災害の大半は、エレベーター構造規格に適合していない機械設備を使用した時に発生しており、この災害も、その一例と言える。本件災害は、搬器の落下によるものであるが、その直接原因は巻上げ用ワイヤロープが乱巻きにより切断したと見られている。さらに、間接原因としては、事業者が、労働安全衛生法に定められているエレベーターの製造段階から設置使用時における安全確保対策を知らず、製造者が専門業者でなかったため適切なアドバイスも得られないで、これを怠っていたことが指摘されている。
同種災害の防止を図るためには、次のような対策の徹底が望まれる。
1 エレベーター構造規格に適合するものを設置すること。
2 積載荷重を超える荷重をかけて使用しないこと。
3 エレベーターの運転方法、故障した場合の処置等に関する規程及び安全点検チェックリストを作成整備すること。
4 安全装置の作動状況の調整、定期自主検査、作業開始前の安全点検等の基本対策を着実に実施すること。
5 関係労働者に対し、上記2〜4の事項に関する教育訓練を行うこと。