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この災害は、写真現像機等の写真処理機器の製造を行なっている事業場で発生したものである。 災害発生当日、被災者は、一人でタレットパンチプレスによる加工作業に従事していたので、災害発生状況の詳細については推測の域をでないが、次のような経過をたどったものと考えられる。 被災者が、タレットパンチプレス(数値制御方式で、作業者が加工材をセットするとその後は自動運転となる。)を使用して作業中、何らかのトラブルで機械が停止した。 そこで、被災者は、クランク軸に異常が発生したものと判断し、テーブル上にあがり、クランク軸にハンドルバー(手工具)を差込みクランク軸を回そうとした。 このとき、クランク軸が回転を始め、差し込んでいたハンドルバーも回転したため、柄の部分が被災者の頭部を強打した。 使用していたハンドルバーは、クランク軸の上死点がずれたときに上死点を調整する工具として使用されており、調整時にはクランク軸に差し込みクランク軸を回すもので、使用の頻度は月1回程度であった。
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この災害は、写真現像機等の写真処理機器の製造を行なっている事業場のタレットパンチプレスで発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。 1 運転の切替えが不適切であったこと タレットパンチプレスが、自動運転中(AUTOモード)に一時停止状態となった場合、外部からクランク軸を回転させるためには、HANDモードに切替える必要があるが、災害直後の表示はAUTOモードになっていた。 したがって、クランク軸が急に回転を始めた原因としては、モード切替えの操作が不十分であった場合、プレス機械の作動異常があった場合等が考えられる。 2 被災者の作業位置が適切でなかったこと 被災者が取り扱っていたハンドルバーは、柄の部分が約90センチメートルの長さであり、回転した場合には、かなりの範囲が危険域となり、被災者の作業位置が適切でなかったことが考えられる。 3 定期的な検査が行なわれていなかったこと プレス機械については、安全衛生関係法令で毎年一回の特定自主検査を義務付けているが、実施されていなかった。
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この災害は、写真現像機等の写真処理機器の製造を行なっている事業場のタレットパンチプレスで発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 1 作業者にクランク軸を手動で回す場合には、確実にモーターを停止するよう徹底すること この災害の場合に、被災者がHANDモードに切替えたか否かは不明であるが、モーターの不意の回転が予測される中でクランク軸の調整を行なうことは極めて危険であるので、モーターの停止を徹底すること。 2 モーターが停止状態でなければクランク軸を外部から回転させることができないような構造とすること 制御装置の故障等により、モーターが停止されなかった場合を考慮し、例えば、クランク軸の外側にカバーを設け、モーターが完全に停止しないとカバーが開かないようにするなどの構造とする。 3 クランク軸を回転させる手工具の改良を行うこと この事業場では、ハンドルバーの他に円盤状の手工具も使用していた。 円形のアルミ板に、クランク軸を差し込む穴のあいたものをネジで取付けるもので、万一クランク軸が回転したときはネジが緩む構造となっている。 手工具に改良を加え、これらの使用を徹底する必要がある。 4 特定自主検査等を実施すること 一定の資格を有する者、又は専門の検査業者による特定自主検査等を実施し、異常箇所については確実に補修をする必要がある。
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