牛舎で飼育していた種雄牛に襲われて作業者が死亡した
業種 | 畜産業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 激突され | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 省略行為 | |||||
発生要因(管理) | 安全措置の不履行 |
No.101650
発生状況
黒毛和牛繁殖牛500頭を飼育している牛舎で、繁殖雌牛に対し、繁殖治療のシダー(繁殖機能が低下した繁殖雌牛の機能を回復させるための器具)入れ作業を行っていた。 別の作業者が昼休憩だと声を掛けたが、被災者は全部作業を終わらせて休憩をとると言い、一人で作業を継続した。昼休憩後の昼礼にも被災者は姿を見せなかった。別の作業者は、種雄牛(体重630kg)の足元付近に被災者のヤッケ(防風性と防寒性を備えたフード付きの上着)が見えたので異変を感じ、すぐさま駆け寄った。鼻息が荒く興奮している種雄牛の近くで、仰向けの状態で倒れている被災者を発見した。救急隊が到着した時点ですでに心肺停止状態で、病院に搬送されたが死亡した。 被災者の死因は重症胸部外傷だった。被災者の手足には防御痕がなく、種雄牛に襲われた直後に気を失い、その後も胸部を中心に執拗に種雄牛の攻撃を受けたものと考えられる。また、被災者が立ち入った牛舎の房は、種雄牛、繁殖雌牛ともにスタンチョン(牛の頸部を挟んで安定させるつなぎ止め具)に固定されておらず、牛は自由に動ける状態だった。 牛の習性としては、以下の3つがある。 @牛を扱うときのルールとして、牛を驚かせることは厳禁。近づく場合は、牛に声を掛けながら近づく。牛は後脚で蹴ることもあるため、治療など必要なとき以外は牛の後ろには立たない。 A種雄牛が攻撃するときの習性として、前脚は使わず頭で相手を突くが、興奮して攻撃を始めると相手が動かなくなるまで執拗に攻撃する。 B 繁殖雌牛の気性は、種雄牛に比べさほど荒くないが、分娩直後は荒い。 |
原因
・ | 種雄牛をスタンチョンに固定させずに、房に立ち入ったこと |
・ | 休憩時間だったため周囲に別の作業員がおらず、一人で作業を行っていたこと |
対策
・ | 労働者を種雄牛がいる房に立ち入らせる場合は、房内の種雄牛をスタンチョンまたはロープで確実に固定させること |
・ | 育成牛や繁殖雌牛がいる房に労働者を立ち入らせる場合でも、スタンチョン等で牛を固定する、複数人で作業を行う等、労働者が牛に襲われないように必要な対策を講じること |
・ | 関係労働者に対し、種雄牛や繁殖雌牛等の取扱いに関する安全な作業方法について、定期的に安全教育を行うこと |