飲食店の厨房において、濡れた床で転倒して死亡した
業種 | 飲食店 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 作業床、歩み板 | |||||
災害の種類(事故の型) | 転倒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 保護具、服装等の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 保護具、服装の欠陥 |
No.101649
発生状況
ファミリーレストランの厨房で、食器洗浄中に名前を呼ばれた被災者は、炊飯作業の決まりについて説明を受けるため、移動しようとした。足音のあとに倒れた音が聞こえたので、別の作業者が近づいたところ、食器洗浄機付近の床面にうつ伏せの体勢で被災者が倒れていた。発見時には、衣服の背部が水で濡れていたが、意識があり頭部からの出血はなかった。頭と腰の痛みを訴えていたが、ほどなくして一人でゆっくり立ち上がった。耳が聞こえづらいと訴えたので、病院に行くよう促すも「大丈夫」との返答があった。その後、自ら車を運転して早退した。帰宅後に強い頭痛を訴えたため、家族が救急車を手配し、病院に搬送され手術も行われたが、翌日に死亡した。 床面が濡れていたのは、被災者による給湯栓の閉め忘れで、食器保温湯槽から湯があふれ、床端の排水溝で処理しきれず、床に広がったものだった。別の作業者が給湯栓を閉め、床がうっすら濡れていることも確認していたが、水溜まりの状態でもなくすぐに乾くと思い、拭き上げ等の措置はしていなかった。 |
原因
・ | 床の一部が濡れていたことで、滑りによる転倒の危険が生じていたこと |
・ | 床にこぼれた水をすぐにふき取る等、転倒による危険を回避するための対応が図られていなかったこと |
・ | 雇入れ時の安全衛生教育の一部が、労働者の自主学習に委ねられていたことで、教育すべき事項が完遂されていなかったこと。また、労働者に対し、転倒による危険の防止に関する教育指導が十分に実施されていなかったこと |
・ | 被災者からの耐滑靴の購入希望に対し、事業者側が購入手配を失念していたことにより、労働者が耐滑靴を着用していなかったこと |
・ | 店舗として衛生推進者の選任はされていたものの、必要な職務が十分に図られていなかったこと。また、安全推進者等の安全管理面を担当する者の指名はなく、労働災害防止への対応が十分ではなかったこと |
対策
・ | 作業場の床、通路については、梨地仕上げの床面とするなど、滑り等の危険のないものとし、かつ、安全な状態を維持すること |
・ | 床にこぼれた水、油等の早急なふき取り等、安全な作業環境の維持に関する事項をはじめ、安全衛生に関する作業マニュアルを基に、関係労働者に対して定期的に再教育を行い、その徹底を図らせること |
・ | 雇入れ時の安全衛生教育を計画的かつ効果的に実施し、内容を十分に理解させること。教育の中で、転倒災害の発生状況、発生の特徴等と防止対策について教育を十分に行うこと |
・ | 転倒による危険のおそれがある作業場で働く労働者に対し、事業者として労働者に耐滑性のある靴の使用を徹底する等、具体的な措置を講じること |
・ | 衛生推進者に、必要な職務の遂行を徹底させること。また、安全推進者の配置等に係るガイドラインに基づき、推進者の育成および指名を行い、職場環境や作業方法の改善、安全衛生教育の実施など、必要な職務に取り組ませること |
・ | 本社と店舗の役割に応じた全社的な安全衛生管理活動の積極的な展開を図ること |