被災者が、鉄製の電動移動式棚の間で商品の在庫確認中、別の作業員が被災者に気付かず棚を操作し、棚の間にはさまれ死亡した
業種 | その他の食料品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の装置、設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護措置・安全装置の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 防護・安全装置を無効にする |
No.101611
発生状況
会社内倉庫で棚卸の準備作業として、被災者は鉄製の電動移動式棚の間で在庫管理の仕事を行っていた。離れた場所にいた別の作業員は、被災者が棚の間で作業中であることに気付かず、棚を操作したため、被災者は退避を試みたが間に合わず、棚のフレームに頭部をはさまれた。被災者は病院に搬送されたが、間もなく死亡した。 電動移動式棚の運転モードは、通常用の自動モードと異常時・保守点検用の手動モードの切り替え式であった。自動モードでは1つの棚の間が自動で全開になるが、手動モードでは、任意の棚を動かし、複数箇所の間を開けることができる。災害発生時、被災者は手動モードで棚を移動させ、棚の間で作業を行っており、その後、別の作業員は自動モードで棚の移動を行っている。 安全装置は、棚の入り口で人や障害物を検知するセンサーと、棚の作動時のメロディー音があった。センサーは、作動前に棚の間に入っていた作業者や障害物は検知せず、作動が可能な仕組みだった。メロディー音は、手動モードの場合には鳴らない仕組みだった。 |
原因
1 | 既存の安全装置の効果は限定的であり、作動前に棚の間に作業者がいる状態で、棚を動かすことができたこと |
2 | 作業手順書では、自動モードにより棚の間を全開にして作業することが原則であるとされていたにも関わらず、作業員が容易に自動と手動を切り替えることができたため、手動モードで同時に複数棚の間を開ける作業が常態化していたこと | 3 | 棚を移動させる際の安全確認が疎かになっていたこと |
4 | 運転開始時の合図が定められていなかったこと |
5 | 過去、同種のヒヤリハット事例があったにもかかわらず、事業場としてのリスクの見積もりが甘く、具体的な対策を講じていなかったこと |
6 | 複数人作業の際の作業員間の連絡調整が不十分であったこと |
7 | 電動移動式棚の安全教育について、当該機械の危険な箇所、操作方法等について十分な教育がなされていなかったこと |
対策
1 | 電動移動式棚の間に作業者がいるときに、他の棚を操作できないような措置を講じること |
2 | 作業手順書に則り、手動モードによる操作は異常時、保守点検時のみの運用を徹底し、自動と手動の切り替えを、作業員が容易に行えないよう措置すること |
3 | 安全確認を確実に実施できるような方策を検討し、運転開始時の合図を定める、電動移動式棚の操作ボタンを押下してから動き出すまでに時間的な猶予を設ける等の措置を講じること |
4 | 現場から報告のあったヒヤリハット事例などについては、リスクアセスメントを実施し、組織として対応を検討すること |
5 | 複数人作業の開始前は、各作業員の動きや機械の動作等について、作業員間の連絡調整を十分に行うこと |
6 | 当該機械の特性を作業者に十分に理解させるため、安全教育を徹底すること |