硝酸加熱溶解後のスラッジ状の銀の移し替え時の硝酸ガス吸入によるばく露
業種 | 非鉄金属精練・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護措置・安全装置の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 安全措置の不履行 |
No.101588
発生状況
スラッジ状の銀をステンレス容器で硝酸加熱溶解した後、被災者が温度の下がった溶液を樹脂ドラムへ移し替えていたところ、立ちのぼった硝酸性のガスを吸引し、意識を失ったもの。作業場所の気積は252.69m3、局所排気装置が4基設けられているが、容器の移し替えをする際は囲い式フードの前で作業を行っていた。シャッターや扉は開放された状態であった。被災者は、防毒マスクを着用していたが、当該マスクには接顔メリヤスが装着されており、吸収缶は使用開始後3日目であった。 |
原因
1 | 呼吸用保護具の不適切な着用 |
2 | 呼吸用保護具管理不足・点検不備 |
3 | 作業標準書・マニュアル未作成 |
4 | 安全衛生教育未実施 |
5 | 換気・排気装置未設置 |
6 | 作業者の危険有害性認識不足 |
対策
1 | 寸胴鍋の溶液を樹脂ドラムに投入する際のガス等の発散量を減少させるため、温度測定を行う等、溶液の温度が十分に低下したことを確認したうえで作業を行わせること。 |
2 | 作業者が硝酸性のガス等にばく露しない又は減少させるため、寸胴鍋から樹脂ドラムへの移送の自動(密閉)化、局所排気装置の設置、作業者方向へガスが向かわない気流をつくる等の措置を講じること。 |
3 | 防毒マスクを使用する際は、下記事項に留意し、適切な使用及び管理を徹底すること。 @使用時間を正確に記録し、あらかじめ設定した時間を目安に吸収缶を交換すること。なお、交換時間を設定する際は、現場のガス濃度(平均値)を測定し、破過曲線図から破過時間を求めた後、十分安全を考慮した使用時間とすること。また、硝酸性のガス等は眼及び皮膚を刺激することから、有害性等の程度に応じ、全面形の防毒マスク及び送気マスク等の給気式呼吸用保護具を着用すること。 A防毒マスクを保管する際は、湿気の少ない清潔な場所に専用の保管場所を設け、管理状況が容易に確認できるように保管すること。なお、一度使用した吸収缶を保管すると、一度吸着された有害物質が脱着すること等により、破過時間が破過曲線図によって推定した時間より著しく短くなる場合があるので注意すること。 B面体の接顔部に「接顔メリヤス」等を使用することは、有害物質が面体の接顔部から面体内へ漏れ込むおそれがあるため、行わせないこと。 C特定化学物質作業主任者は保護具の使用状況の監視を確実に行うとともに、関係労働者に保護具の使用方法について周知徹底を図ること。 |
4 | 当該作業において、作業者が多量の硝酸性のガス等にばく露することの無いよう、適正な作業標準を作成し、関係労働者に周知を図ること。また、化学物質の有害性について、関係労働者に定期的に教育を行い、化学物質に対する知識及び労働衛生にかかる意識の向上を図ること。 |