パルプ製造工場で硫化水素中毒となり入院
業種 | パルプ・紙製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業環境の欠陥 | |||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) | 危険な状態を作る |
No.101427
発生状況
本災害は、洗浄タンク内にスルファミン酸を投入したところ硫化水素が発生した。 この事業場では連釜を用いてパルプ製造を行っているが、その際使用するアルカリ溶液を加熱するためのヒーターに炭酸カルシウムが徐々に沈着してくるため、定期的に酸洗浄を行っていた。当日、ヒーターを洗浄するためアルカリ溶液のバルブを閉じ水洗した後、溶解タンクとヒーターの間のバルブを開けて溶解タンク内の温水をヒーターに循環させた。被災者Aは酸洗浄液を調製するため溶解タンク内の温水に粒状のスルファミン酸を投入し循環させたところ、硫化水素が発生し、作業を行った被災者A及び同作業を監視していた被災者Bが、硫化水素を吸入し、意識を失った。両者とも意識はすぐに戻ったが、救急車で病院に搬送され、硫化水素中毒と診断された。 |
原因
1 | ヒーターのアルカリ溶液のバルブが確実に閉じていなかったため、アルカリ溶液とスルファミン酸が反応して、硫化水素が発生したこと。炭酸カルシウムを挟んだ状態でバルブが閉じられたことが原因と推測される。 |
2 | 洗浄溶液の酸濃度が検出されなくなるという過去に例のない事態に対し、原因を追究することなく安易にスルファミン酸の追加投入を行ったこと。 |
3 | 硫化水素が発生する可能性について、労働者に認識がなかったこと。 |
4 | 硫化水素が発生した場合に備えた安全対策を講じていなかったこと。 |
対策
1 | 作業の当初にバルブを閉める際に、複数人で閉まっていることを確認すること。また、酸洗作業中は、定期的にバブルの状態を確認すること。 |
2 | 想定外の事態に直面した時は、一旦作業を停止して原因について調査すること。 |
3 | 同種災害の災害事例やヒヤリハット事例を可能な限り収集して、労働者に周知すること。また、危険予知(KY)活動を積極的に行うこと。 |
4 | 防毒マスクの着用や換気装置の稼動などの安全対策を講じること。 |