フォークリフトのマストと車体の間を通って運転席に戻ろうとした被災者が、マストクロスメンバーとヘッドガードに頭部を挟まれた
業種 | 貨物取扱業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 動力運搬機 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業方法の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 心理的原因 | |||||
発生要因(管理) | その他の不安全な行為 |
No.101395
発生状況
本件災害発生時の被災者の行動を目撃した者はいないが、以下の事実に基づき、被災者は、トラックの荷台の積荷を、荷台の上にフォークリフトで持ち上げたパレットの上に載せ終え、荷台からフォークリフトの運転席に移動する際、一旦地上に降りることなく、直接荷台からフォークリフトのマストと車体の間を通って運転席に移動する途中、誤ってティルトレバーとリフトレバーに触れ、後傾してきたマストのマストクロスメンバーとヘッドガードに頭部を挟まれたと推定される。 | |
1 | フォークリフトのマストが後傾し、フォークが最上部まで上がった状態であったことから、ティルトレバーとリフトレバーが運転席に向かって引かれる操作が行われたと判断される。 |
2 | フォークリフト前方に体を向け、右足をマストと車体の間に出した状態であったことから、被災者は、マストと車体の間を通って、フォークリフトの運転席に移動しようとしたと判断される。尚、マストと車体の間は、積荷をパレットに載せ、移動準備を整えた段階で約50cmの間隔があり、人が横向きに入ることは十分可能であった。また、災害発生時、積荷はパレット上に載せられており、あとは運転席に移動して、フォークリフトのフォークを下降させる状態となっていた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 被災者が、トラックの荷台からフォークリフトの運転席へ移動する際、行動を省略し、マストと車体の間を通ろうとしたこと(推定)。 |
2 | 被災者が、フォークリフトのキースイッチをオンにしたまま運転席を離れたこと。 |
3 | フォークリフト作業について、作業計画が作成されておらず、作業方法については「作業者任せ」になっていたこと。 |
4 | 災害発生時に使用していたフォークリフトには「インターロック機構」が備え付けられていなかったが、インターロック機構が備え付けられたフォークリフトでは、キースイッチをオンにしたままで運転席を離れても、荷役作業ができない構造となっている。 被災者は、様々な配送先で様々なフォークリフトを使用しており、被災者が上記1の行動をとったとすれば、災害発生時に使用していたフォークリフトがインターロック機構を「備え付けた」フォークリフトであると誤認し、省略行動をとった可能性がある。 |
5 | 運転席を離れる際は、キースイッチをオフにすることが当然であるが、被災者を含めた当該事業場の労働者に対し、配送先で使用するフォークリフトの使用に応じた安全教育を行っていなかったこと。 |
対策
類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | フォークリフトの運転は、最大荷重に合った資格を有している労働者に行わせること。 |
2 | フォークリフト作業について、フォークリフト作業計画を作成すること。 |
3 | マストとヘッドガードに挟まれる災害を防止するため、フォークリフトのマストと車体の間等の危険個所には立ち入らせないようにすること。 |
4 | フォークリフトの運転席を離れる際は、原動機を止めること。 |
5 | 配送先でフォークリフトによる荷役作業を行わせる場合は、事前に当該フォークリフトの使用、検査等の法規制の遵守状況を確認し、労働者に対して安全教育を行うこと。 |
6 | 配送先においても、陸運事業者の労働者にフォークリフトを使用した荷役作業を行わせる場合は、陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策のガイドラインに基づき、安全管理者の中から荷役作業の担当者を指名し、陸運事業者と連携した荷役作業の労働災害防止対策に関する事項を行うこと。 |