被災者は、角形鋼管2本をハッカーで玉掛けし、移動させていたところ、つり荷がハッカーから外れて落下し、下敷きになった
業種 | 製造業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 玉掛用具 | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業方法の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 機械、装置等の指定外の使用 |
No.101374
発生状況
工場建屋内において、被災者他1名は、共同してホイスト式天井クレーン(定格荷重5t)2基を操作し、共吊りにより、長さの異なる2本の建築資材用の角形鋼管(断面:55cm、長さ:738cmと717cm)をハッカーで玉掛けし、出荷製品等の仮置き場へ移動させようと決めた。 両名は、角形鋼管をつり上げる玉掛け用具として、天井クレーン1基に対し、先端に2つのつめを有するハッカー1個を使用し、2本並べた角形鋼管の端部に、ハッカーのつめを1つずつ掛ける方法により玉掛けを行い、一度に2本の角形鋼管を地切り後、高さ約170cmの位置までつり上げ、共吊りの状態で、災害発生場所である出荷製品等の仮置き場まで、クレーンを操作しつつ角形鋼管と一緒に移動した。 仮置き場到着後、両名は角形鋼管をつり上げたままの状態で、天井クレーンの運転操作を止めて静止させ、被災者は、足元床面に置かれていた角形鋼管の下に枕木として敷く木製の角材を拾おうと、角形鋼管の下に入り込んだところ、2本の角形鋼管のうち、短い角形鋼管が、被災者が操作していた天井クレーンのハッカーから外れて落下し、当該角形鋼管の下にいた被災者に直撃した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 角形鋼管2本の重量が、1基の天井クレーンのつり上げ荷重能力を超えてしまうという理由等から、クレーン相互の運動の差異が生じやすい2基の天井クレーンを用いて、角形鋼管をつり上げる「共吊り」の方法により移動作業を行っていたこと。 |
2 | ハッカーのつめ2本を、1本ずつ角形鋼管の端部に引っ掛けていたが、ハッカーのつめの奥行きが不十分であり、短いほうの角形鋼管は、ハッカーのつめの引っ掛かりが不十分であったこと。 |
3 | 玉掛用具としてハッカーを用い、かつ、クレーンで共吊りを行っていた危険な状況下で、荷の下に入って作業を行っていたこと。 |
4 | 荷の玉掛け基準、ハッカーの使用基準等、天井クレーン作業について作業標準等に基づく具体的な定めがなく、関係労働者に対する安全教育及び安全管理が不十分であったこと。 |
対策
類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 吊り荷である鋼管の重量が、天井クレーンの定格荷重を超える場合には、鋼管を1本ずつ運搬し、天井クレーンの共吊り作業は禁止すること。 |
2 | 玉掛用具であるハッカーの使用方法として、2本の鋼管をつり上げる場合には、片端に2つのハッカーを使用させ、1つのハッカーで2本のハッカーをつり上げる方法を禁止すること。 |
3 | ハッカーを用いて玉掛けを行った荷がつり上げられているときは、つり上げられた荷の下に労働者を立ち入らせないこと。 |
4 | 荷の玉掛け基準、ハッカーの使用基準等、天井クレーン作業について作業標準書を作成すること。 |
5 | 安全衛生教育の実施等により、関係労働者に作業手順を周知し、安全衛生に関する規律の確立を図ること。 |