被災者が操作する車両積載型トラッククレーンは、定格総荷重を超える荷をつり上げていたため転倒し、被災者はその下敷きとなった
業種 | 建設業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 転倒 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | |||||
災害の種類 | ||||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業方法の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 機械、装置等の指定外の使用 |
No.101367
発生状況
現場入場初日であった被災者は、朝礼時に現場代理人補助者AよりU字溝のフタ(コンクリート製の板状のもの。365kg×6枚=2,190kg)を発注者の資材置場へ運ぶように指示された。 車両積載型トラッククレーンへの積み込みは、被災者がドラグショベルを運転し、玉掛有資格者であるBが玉掛作業を担当した。車両積載型トラッククレーンへの積み込みが完了した際、Bは6枚のU字溝のフタを、車両積載型トラッククレーンから1度に下ろすのは困難と考え、被災者には「2枚ずつ3回に分けるか、3枚ずつ2回に分けて下ろそう」と伝えたが、現場代理人補助者であるAには詳細を伝えていなかった。 資材置場へ到着したAと被災者は、発注者より荷下ろし場所の指示を受け、被災者は単独で荷下ろし作業を開始し、Aは、資材現場から別の場所へ移動するため、社用車へ向かって歩き出した。 ほどなく、社用車へ向かって歩いていたAが何気なく振り返って車両積載型トラッククレーンを見たところ、クレーンが旋回していたが、数秒後、車両積載型トラッククレーンがゆっくりと傾き始めた。 Aは慌てて車両積載型トラッククレーンに近づいたが、車両積載型トラッククレーンはそのまま転倒し、被災者は現場に置いてあった別のコンクリート製のフタと車両積載型トラッククレーンの間に挟まれ、死亡した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 車両積載型トラッククレーンの空車時定格総荷重(最大でも約1.2t)を超える荷(U字溝のフタ。重量2.19t)をつり上げ、旋回したこと。 |
2 | 車両積載型トラッククレーンの使用にあたり、場所の広さ、地形及び地質の状態、運搬する荷の重量、使用する移動式クレーンの種類及び能力等を考慮したうえで、作業方法等を検討していなかったこと。 |
3 | 複数の玉掛け用具を使用して荷をつり上げたことにより、荷ぶれが生じ、偏荷重が生じた可能性があること。 |
4 | 玉掛有資格者のBは、車両積載型トラッククレーンで荷下ろし作業を行うには「1度では無理」と考え、被災者には「2〜3回に分けて下ろすように」と伝えていたが、Aには伝えられておらず、本来ならば、現場管理の総括者として、荷下ろし作業の手順について確認すべき立場にあったAは、過荷重であることを十分に認識していなかったこと。 |
5 | 玉掛技能講習を修了していない無資格者が、玉掛作業を行ったこと。 |
対策
類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 車両積載型トラッククレーンでの荷の積み下ろし作業を開始する前に、予め、当該作業にかかる場所の広さ、地形及び地質の状態、運搬しようとする荷の重量、使用する移動式クレーンの種類及び能力等を考慮して、作業に適した計画を定め、作業計画に基づいた作業を行うこと。 |
2 | 玉掛業務にあたっては、複数の玉掛用具の組合せはせず、荷の形状等に応じた適切な玉掛用具を選定し、使用すること。 |
3 | 報告・連絡・相談を徹底し、現場で生じた疑義については、各人の判断で解決しようとせず、現場責任者に問い合わせ、指示を仰ぐこと。 |
4 | 有資格者が現場で不足しないよう、計画的な資格取得者の確保に努めること。また、車両積載型トラッククレーンを運転する労働者には、移動式クレーンと玉掛けの資格を有する者を充て、無資格者を就業制限業務に従事させないこと。 |