フッ化水素が、配管の腐食部分から漏出し、水蒸気と反応し生成したエアロゾルにばく露した被災者が、フッ化水素中毒を発症した
業種 | 機械修理業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 物自体の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 不安全な放置 |
No.101364
発生状況
製造されたフッ化水素の充填を受けるため、コンテナ車の積込作業員が供給開始スイッチを操作した。この操作によりポンプが起動し、フッ化水素の供給タンクから循環配管を通じ、コンテナタンクにフッ化水素の充填が開始された。 充填開始直後、循環配管の一部から白い霧状のものが漏出していることに積込作業員が気づき、スイッチを操作してポンプを停止した。しかし、当該箇所の表面から内部にかけて腐食が生じていたため、配管内部からフッ化水素が液体のまま漏出し、一部が空気中の水蒸気と反応してフッ化水素のエアロゾル(微粒子)となって拡散し、風下で(フッ化水素の充填とは別の)作業を行っていた複数の被災者に到達した。 このため、複数の被災者は頭痛、のどの痛み等を訴え、救急搬送先の病院でフッ化水素ガス中毒と診断された。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | フッ化水素を送給する配管(鋼管)の点検及び整備が不十分であったため、配管表面から内部に達するほどの錆による腐食を生じ、これを発見することなくフッ化水素を送給し、漏出に至ったこと。 |
2 | フッ化水素は腐食性が極めて高いにもかかわらず、定期点検及び日常の整備を通じ、フッ化水素を漏出させない管理体制が十分でなかったこと。 |
3 | 配管の点検及び整備の記録を、十分な期間保存しなかったこと。このため、前回の配管交換時期が不明であり、適切な方法による点検及び整備時期を逸したこと。 |
対策
類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | フッ化水素を送給する配管について、適切な期間毎に、腐食箇所を発見し得る方法で点検すること。 |
2 | 腐食し易い箇所等をステンレス製の配管と交換すること。 |
3 | 配管の点検及び整備記録は、直近の配管交換時期がわかるよう、十分な期間に亘り保存すること。 |
4 | フッ化水素の性質、フッ化水素中毒の症状と応急処置(洗眼や皮膚の洗浄)を含めた安全衛生教育を行うこと。 |
5 | リスクアセスメントを実施して、危険源(ハザード)と危害の甚大さを把握し、リスクの低減を図ること。 |