次亜塩素酸ナトリウムのタンクに、硫酸アルミニウムを誤注入し、発生した塩素ガスを吸入した労働者が、塩素ガス中毒を発症した
業種 | し尿処理業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業方法の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 分類不能 | |||||
発生要因(管理) | 誤った動作 |
No.101363
発生状況
被災現場であるし尿処理施設に、運輸会社の労働者(タンクローリーの運転者)は、汚水の凝集剤として使用する硫酸アルミニウムを配送した。各配管の受け口には、物質名を記載した札が掲げられているが、労働者は、物質名を記載した札を確認することなく、次亜塩素酸ナトリウムのタンクに通じる配管の受け口に、運んできた硫酸アルミニウムの注入ホースを誤って接続し、注入を開始した。 硫酸アルミニウムの注入開始後、運輸会社の労働者は注入状況の確認のため建屋内に入ったところ、タンク内の次亜塩素酸ナトリウムと注入された硫酸アルミニウムが混ざり合って発生した塩素ガスにより、息ができず、目も開けられない状態であったので、直ちに硫酸アルミニウムの注入を停止した。尚、次亜塩素酸ナトリウムのタンクは、タンク上部のねじ込み式の蓋が外れており、ここから塩素ガスが漏出した。 一方、建屋内には3名のし尿処理施設職員が就業しており、各々の作業場所にて、発生した塩素ガスを吸入し、搬送先の病院で塩素ガス中毒と診断された。また、運輸会社の労働者も硫酸アルミニウムの注入停止後、建屋内にいた被災者を救出するため建屋内に戻り、その際に吸入した塩素ガスにより、搬送先の病院で塩素ガス中毒と診断された。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 硫酸アルミニウムを配送した運輸会社の労働者(タンクローリーの運転者)が、誤って硫酸アルミニウムを次亜塩素酸ナトリウムのタンクに通じる配管に接続したことにより塩素ガスが発生したこと。 |
2 | 配管には物質名を記載した札が掲げられているにもかかわらず、運輸会社の労働者は、物質名の十分な確認を怠ったこと。 |
3 | し尿処理施設の職員が、配管の接続に立ち会わなかったこと。 |
4 | 運輸会社の労働者は、し尿処理施設の職員を救出するためとはいえ、塩素ガスが発生していることを認識しながら、有効な防護具がないにもかかわらず塩素ガスが発生している処理棟内に立ち入り、塩素ガスを吸入してしまったこと。 |
5 | 労働者と、し尿処理施設の職員に対する作業手順の教育訓練と化学物質の危険性等に関する教育が不十分であったこと。 |
対策
類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 次亜塩素酸ナトリウム又は硫酸アルミニウムをタンクに注入する際、誤って注入してしまうことがないように、接続するフランジの形状を別のものとすること。 |
2 | 接続するフランジに納品業者(運送会社の労働者)が勝手にホースをつなぐことができないように蓋をしたうえで施錠し、フランジにホースを接続する際は、納品業者任せにせず、特定化学物質等作業主任者その他化学物質による労働災害防止に関する知識を有する職員と複数で確認しながら、接続するフランジの鍵を外して接続すること。 |
3 | 運輸会社の労働者に対し、ホースの接続先を誤ることのないように、タンクに通じる配管等に物質名が掲示又は表示されている場合は、目視等により十分な確認を行ったうえでホースを接続し、注入を開始するように教育を徹底すること。 |
4 | 注入する際は、まず少量を注入し、塩素ガスが発生しないことを確認のうえで注入作業を行うこと。 |
5 | 誤注入により発生する化学物質の危険性、有害性、及び発生時にとるべき対応を記した作業手順書を作成し、SDS等と併せて活用し、改めて教育すること。また、当該文書を配送車(タンクローリー)に備え付け、誤注入時には、避難を含め、即座に対応することができるよう対策を講じること。 |
6 | 厚生労働省の通達(※注)を参照すること。 (※注) 次亜塩素酸塩溶液と酸性溶液との混触による塩素中毒災害の防止について |