加温用ヒーターで洗浄槽が空焚きの状態となり、沈殿油、有機溶剤等が温められ、発生した蒸気を吸引し、急性薬物中毒を発症した
業種 | 民生用電気機械器具製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | その他及び不安全な状態がないもの | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 危険な状態を作る |
No.101361
発生状況
被災者は、汎用モーターの端子キャップ等外装部品の油等の汚れを塗装前に自動洗浄し、下地処理を経て塗装した後に乾燥させる工程において、自動洗浄機及び乾燥室がユニットとなった設備の外で、当該部品をユニットへ自動搬送するための鉄製のレールに取り付けられたハンガーに掛ける作業、及び塗装工程が完了した当該部品を、ハンガーから外して専用籠に入れる作業を行っていた。 被災日の夕方、ハンガー掛け作業を行っていた被災者は、ゴムが焦げるような臭いを感じ、煙草のような薄い煙の筋が自動洗浄設備の部品供給口から作業位置に流れていることに気づいた。 その後、被災者は、当初の頭痛、息苦しさに加えて、めまい、倦怠感(脱力感)、手足のしびれ、悪寒、及び強い吐き気等を覚え、トイレで嘔吐した後、所定の終業時刻まで作業場を離れて休息し、帰宅した。 帰宅後も気分が優れなかった被災者は、受診先の病院で、有機溶剤吸引による急性薬物中毒と診断された。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 自動洗浄設備の洗浄槽の有機溶剤を、補充することなく加温を続けたため、洗浄槽が空焚き状態になり、洗浄槽にあった有機溶剤と沈殿していた油分が蒸気となり、作業現場に漏出したこと。 |
2 | 自動洗浄設備の洗浄槽を加温して、有機溶剤から有害蒸気を多量に発生させ、また空焚き状態になるも、自動洗浄設備の運転を自動又は手動停止させることができなかったこと。 |
3 | 液位低下の制御盤の警告ランプが被災者の作業位置から確認できず、また、警告ブザーの警告音が小さかったため、被災者が液位の低下に気づかなかったこと。 |
4 | 洗浄槽空焚き防止の安全装置が装備されていなかったこと。 |
5 | 自動洗浄設備の稼働中に、蒸気槽の有機溶剤等の水位が異常に低下した場合の対応が十分に想定されておらず、リスクアセスメントが実施されていなかったこと。 |
対策
類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 有機溶剤等の供給ポンプのスイッチに覆いを設け表示する等、意図しない接触や誤操作防止の対策を講じること。 |
2 | 警告ランプ若しくは警告ブザーについて、被災者の作業位置から異常発生を明瞭に認識できるような対策を講じること。 |
3 | 部品洗浄工程について、有機溶剤等の液位及び供給ポンプのスイッチの状態等、作業開始前の点検を徹底し、当該点検の実施結果に基づきリスクアセスメントを行うこと。また、異常発生時の対応を周知徹底すること。 |
4 | 有機溶剤について、以下の事項について安全教育を行うこと。①麻酔作用、急性中毒等、有機溶剤の人体に及ぼす作用、②有機溶剤取扱上の注意事項、③換気の方法、④保護具の使用方法、⑤有機溶剤が発生した際の応急処置、避難と救助の方法。 |
5 | 厚生労働省のパンフレット「有機溶剤を正しくつかいましょう」を参照すること。 |