配管の詰まりを解消するため被災者が「血汁受タンク」に入ったところ、有害ガスを吸引し、タンク内部に倒れこんだ
業種 | 水産食料品製造業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業環境の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | その他の危険場所への接近 |
No.101357
発生状況
被災者は同僚作業員と、魚粉や魚油を製造するプラントにて、原料となる魚滓の血汁が流れ込む「血汁受タンク(以下、タンク)」へ接続している配管が詰まり、血汁が流れ出ず、「スクリューコンベヤ」のパッキン部分から血汁が漏れ出ていることを確認した。 そこで、配管の詰まりを除去するため、被災者はタンクの上部点検口からタンクに入り、頭部をタンクの外に出し、同僚作業員はタンクの上部でホースを持っていた。次いで、被災者は、タンクに接続している配管に、タンクの中から水を流そうとタンクの内部に頭部を入れたところ、直ぐに被災者は頭部をタンクの外に出し、被災者の身体はタンクの中に沈み込んだ。 ホースをもっていた同僚作業員は、直ちにタンクの点検口に入り、頭部をタンクの外に出したまま、タンク内部に前屈みで倒れていた被災者の作業着の襟を掴むとともに助けを求め、駆け付けた清掃作業員とともに、被災者をタンクの外部に救出した。 被災者は救急搬送され、搬送先病院にて「急性ガス中毒(硫化水素中毒疑い)」と診断された。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 接続配管への水通し作業を行うため、被災者がタンクの内部に入ったこと。 |
2 | 被災者が受タンクの内部に入り作業を行う前に、酸素濃度、硫化水素濃度を測定していなかったこと。また、測定を行うために必要な測定器具を、有効な状態で保持していなかったこと。 |
3 | 工場において、空気呼吸器等の保護具が備え付けられていなかったこと。 |
4 | 工場内に、酸素欠乏危険場所が存在していたにもかかわらず、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者を選任していなかったこと。 |
5 | 事業場においては、設備の運転マニュアルがあるのみで、書面による工場内の安全管理規定、非定常作業を含めた作業手順書を整備していなかったこと。 |
6 | 工場長以下の指揮命令系統が明確に確立しておらず、各労働者の経験により作業を行っていたこと。 |
対策
類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 酸素濃度、硫化水素濃度を測定できる測定器を備え付け、タンクの内部等で行われる酸素欠乏危険作業等の開始前に、酸素濃度、硫化水素濃度を測定(記録は3年間保存)することとし、その結果に基づき、換気等の措置を講じること。 |
2 | 当該作業を行う場所の空気中の酸素濃度を、18%以上に保つよう換気すること。尚、第2種酸素欠乏危険作業に該当する場所では、空気中の酸素濃度を18%以上、且つ硫化水素の濃度を10ppm以下に保つよう換気すること。 |
3 | 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、危険作業主任者を選任すること。 |
4 | 空気中の酸素及び硫化水素の濃度測定器具を常備、又は容易に利用できる措置を講じること。 |
5 | 空気呼吸器、酸素呼吸器又は送気マスク、安全帯、はしご、繊維ロープ等、非常の場合に労働者を避難させ、若しくは救出するための必要な用具を備えること。 |
6 | 当該作業における危険源の洗い出しを行い、安全衛生管理規定、作業手順書等を作成し、関係労働者にその周知を行うこと。 |
7 | 安全衛生管理体制を確立し、作業における指揮命令系統を明らかにすること。 |
8 | 労働者に対し、酸素欠乏危険場所における作業に係る特別教育、及び必要な安全衛生教育を行うこと。 |
9 | 「酸素欠乏症等防止規則」に関するリーフレットを参照すること。 |