焼成室内にて、パンの焼き具合等の監視業務に就いていた被災者は、トンネルオーブンの出口付近で倒れた状態で発見された
業種 | パン、菓子製造業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 高温・低温環境 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 部外的、自然的不安全な状態 | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 不安全な放置 |
No.101356
発生状況
災害発生当日、被災者は昼前より、昼食及び適宜休憩をとりながらパン製造工程ラインの監視業務に就いていたが、夜分、焼成室におけるトンネルオーブン出口付近で、トンネルオーブン側に頭を向けて仰向けに倒れているところを、焼成室に隣接する仕上げ室の労働者により発見された。 直ちに救急車が要請され、到着までの間、身体が熱く意識がなかった被災者の身体を氷水で冷やすなどの応急措置が施されたが、翌朝、熱中症により搬送先の病院で死亡した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 被災者は、焼成室内にて、製品を加熱するトンネルオーブン出口付近で作業を行っており、作業位置での室温が40度を超える高温環境下での作業であったこと。 |
2 | 焼成室全体を冷却する冷房装置が設けられていたが、適切な室温に下げるほど有効に機能していなかったこと。 |
3 | 水分・塩分は焼成室内に常備されていたが、労働者が補給しているのか確認等対応が十分ではなかったこと。 |
4 | 労働者の健康状態が、適切に把握されていなかったこと。 |
5 | 事業者はもとより、被災者自身が、熱中症の危険や予防に関する十分な知識をもっていなかったため、身体への負荷を感じていたにもかかわらず作業を継続していたこと。 |
6 | 熱中症予防に対する安全衛生教育の徹底が十分でなかったこと。 |
対策
類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 焼成室の熱気が室内にこもらないよう外部に排気するとともに、焼成室全体を冷却する冷房装置の温度設定を適切に行い、室温を下げること。 |
2 | 体感温度の低減のため、パン焼き監視業務の立ち位置に、冷房装置からの冷風が届くように冷風配管の延長、送風機の設置、又は発熱体と労働者の間に遮蔽壁を設けること。 |
3 | 労働者に発汗を伴う作業を行わせる場合は、現場責任者が中心となって、「労働者が水分、塩分を補給しているかどうか」こまめに確認すること。また、労働者間で協力し「熱中症予防を呼びかけ合う」体制を確立すること。 |
4 | 事業者は、高温環境下で作業を行う労働者の健康状態について、常に注意を払い、少しでも異常を認めた場合は、直ちに作業を中断させること。 |
5 | 作業場所の気温条件、作業内容等を考慮して休憩時間の確保に努めること。 |
6 | 熱中症予防に関する安全衛生教育を適宜実施すること。また、厚生労働省による、熱中症に関するホームページを参照のこと。 |