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労働災害事例

濃硫酸タンクの配管取付部から濃硫酸が噴き出す

濃硫酸タンクの配管取付部から濃硫酸が噴き出す
業種 その他の建築工事業
事業場規模 100〜299人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
建設業のみ 工事の種類
災害の種類
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:1人
不休者数:1人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.101326

発生状況

 本災害は、製紙工場において濃硫酸タンク(40m3)のポンプの交換作業中にタンクの配管取付部に亀裂が入り濃硫酸が吹き出し、作業者2名が濃硫酸を浴びたものである。
 濃硫酸タンクに接続されたポンプが故障したため、予備ポンプに交換する作業を構内下請会社の4名で行った。予備ポンプをクレーンでタンクの防液堤内の台座に仮固定し、配管の接続部のフランジ間にパッキングを入れて固定することとした。
 Aがフランジ間にパッキングを入れるための隙間を開けるためにドライバーを差し込もうとしたが入らないので、配管を右足で踏んで隙間を開けようとしたところ、配管が取付部付近から折れ濃硫酸が吹き出し、Aと一緒に作業をしていたBが上半身に濃硫酸を浴びた。
 A、Bは直ちにタンクの防液堤(高さ110m)を乗り越え、近くにあったホースで水を掛け続けた
 A、Bともに「顔面化学熱傷」と診断され、Bは防液堤を乗り越えて、飛び降りた際に右足を骨折したため入院治療を行った。

原因

(1)構内下請会社
1 濃硫酸タンクの配管内部が摩耗して強度が低下していたことを知らずに、同配管を足で踏んでフランジ間の隙間を開けようとしたこと。
2 保護衣を着用して作業をさせなかったこと。
3 作業規程が作成されていなかったこと。
4 作業主任者を選任して作業方法を定めていなかったこと。
(2)製紙会社
1 濃硫酸タンクに接続された配管内部が摩耗して強度が低下していたことについて、点検時に発見できなかったこと。
2 硫酸の危険性及び有害性、硫酸の流出事故が発生した場合において講ずべき応急の措置について記載した文書を構内下請会社に交付していなかったこと。
3 濃硫酸タンク開放点検の化学設備保守作業では、引渡時に関連機器との遮断、残圧残液除去を製紙会社が行う契約であるものの、ポンプの交換作業では、濃硫酸の残圧残液除去の取り決めを特段しないまま、ポンプの交換作業を引き渡したこと。

対策

(1)構内下請会社
1 硫酸が流出する可能性のある作業では、特定化学作業主任者を選任して作業方法を決定した上で作業させること。
2 硫酸が流出する可能性のある作業では、作業に従事する労働者に不浸透性の保護衣、保護長靴等、必要な保護具の管理が適切に行われるよう点検体制を確立させて、不浸透性の保護衣等を使用させること。
3 ポンプの交換作業について作業規程を作成すること。
4 硫酸等の漏洩時に講ずべき応急の措置について作業規程を作成すること。
(2)製紙会社
1 濃硫酸タンクのポンプ交換作業等の化学設備保守作業において、配管の遮断、残圧残液除去を行った上で構内下請会社に引き渡しをすること。
2 濃硫酸タンクの腐食管理、修繕について点検方法を見直すこと。
3 濃硫酸タンクの配管について、受け台等を設けて荷重がかかっても配管が破損することが難しい構造にすること。
4 濃硫酸タンクのポンプ交換作業等の化学設備保守作業を構内下請会社に行わせる際には、硫酸の危険性及び有害性、硫酸の流出事故が発生した場合において講ずべき応急の措置について記載した文書を構内下請会社に交付すること。
5 すべてのタンクに危険性及び有害性、取扱い上の注意事項を見やすい個所に表示して作業員に認識させること。