低圧ボイラーへの点火準備作業を行っていたところ、ボイラー内部で炉内爆発
業種 | 高炉による製鉄業 | |||||
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事業場規模 | 1000人以上 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | ボイラー | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護措置・安全装置の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 分類不能 | |||||
発生要因(管理) | その他の不安全な行為 |
No.101293
発生状況
低圧ボイラーにおいて、ボイラーへの点火準備作業を行っていたところ、当該ボイラー内部で炉内爆発が発生し、その衝撃で吹き飛んだ操作盤の開閉扉が操作盤の前で点火装置を操作していた被災者の顔面に激突し、労働者1名が被災した。 当該ボイラーで使用する燃料は、構内にあるコークス炉で原料の石炭からコークスを製造する工程で発生するコークス炉ガス(通称、Cガスと呼び、組成はカーボンと水素の化合物で、主成分は水素が53%、発熱量は4,600kcal/m3Nと高く、燃焼性に優れている)である。 被災者は、メインバーナーの点火操作を行い燃料のCガスを供給する弁の開操作を開始したが、炉内への点火が確認できなかったためにCガス供給弁を手動で閉止した後、炉内に爆発限界を超えたCガスが滞留していることを知らずに再度点火装置を操作したところ、炉内のCガスにバーナーの火が着火、爆発に至った。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 設備、技術面における原因 (1)ボイラーのメインバーナーに供給したCガスが未着火(炉内で失火している状態)であることを確認した際、炉内に燃料のCガスが滞留していることを知らずに、手動による炉内の再パージを実施することなく、バーナーへの再点火を行ったこと。 (2)Cガスの燃料を炉内に供給する弁の操作を行っていた被災者が、Cガス弁の開放時間が短かったことから、炉内に爆発限界を超えるCガスが滞留していることを全く予想していなかったこと。 (3)炉内で失火した場合に、強制的に燃焼室等の内部を換気させる、Cガスを供給する弁を操作できないようにする等のインターロック機能を有したシステムとなっていなかったために、炉内の失火を示す火炎検出表示ランプが消えた状態でも、Cガスを供給する弁の操作が可能であったこと。 |
2 | 設備使用における管理面の原因 (1)Cガスを供給する弁の開閉をした場合には、弁の構造上、炉内に爆発限界を超えるガス量が充満し、爆発する危険が存在することについて、作業関係者への教育訓練が不十分であったこと。 (2)炉内でバーナーの種火等が失火した後、再点火する場合に、必ず、燃焼室等の内部を強制的に換気する炉内パージを実施することの重要性について、作業関係者への教育訓練が不十分であったこと。 |
対策
同災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 設備・技術的対策 (1)ボイラーの運転に伴うCガス点火作業については、炉内の火炎を確実に検出した場合にのみ、Cガスを供給する弁を開操作できる構造にすること、炉内で失火した場合に、いかなる状況であっても強制的に燃焼室等の内部を換気できる構造にすること、を踏まえた人的誤操作を防止するためのインターロック機能を備え自動制御できるシステムを取り入れる等、ボイラー等設備の安全化対策を徹底すること。 | |
2 | 管理的対策 (1)労働安全衛生マネジメントシステムについて、経営トップをはじめとする全員が主要な生産設備等を含めたリスクアセスメントを展開し、危険・有害要因の低減化に継続的に取り組むこと。 (2)ボイラーの運転に伴うCガス点火作業について、Cガス弁を開閉操作した場合には、弁の構造上、炉内に爆発限界を超えるガス量が充満し、爆発する危険が存在すること、炉内で失火した場合には、必ず燃焼室の内部を強制的に換気する炉内パージを実施すること、等を踏まえた安全な作業方法、設備、機器等の安全対策、管理点検項目等についての見直しを行い、作業基準書(作業手順)を改定すること。 (3)本災害の調査結果等に基づき、見直し、改訂を行った作業基準書に定めた事項については、随時、安全衛生教育等により作業関係者等に対して周知するとともに、定期的に遵守状況を確認、指導できるような管理体制を整備すること。 |