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労働災害事例

トラクターショベルの油圧ホースを交換中にバケットが急に降下する

トラクターショベルの油圧ホースを交換中にバケットが急に降下する
業種 その他の事業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 建設機械等
災害の種類(事故の型) はさまれ、巻き込まれ
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 作業方法の欠陥
発生要因(人) 職場的原因
発生要因(管理) 安全措置の不履行

No.101286

発生状況

 この災害は、トラクターショベルの油圧ホースを交換するため、油圧ホースを外したところ、バケットが急に降下し、ショベルと機体にはさまれたものである。
 災害発生当日の作業は、依頼のあった牧場の堆肥舎において堆肥を切り返すことであった。そして、午前中に事業場から、トラクターショベルを運転し、牧場の堆肥舎に単独で行き、トラクターショベルを使用して堆肥の切り返し作業に取りかかった。
 そして、作業を始めて1時間ほどたった頃、右側の油圧ホースから油圧用オイルが漏れていることに気付いた。このため、堆肥舎の横にトラクターショベルを移動させ、近くにいた牧場の者(経営者の息子)に手伝ってもらって油圧ホースを交換することとした。
 油圧ホースの位置は、アームの下であるため、バケットを降ろした状態では、油圧ホースの交換ができないことから、被災者は、バケットを最高位置まで上げた。また、油圧ホースはアームの下に2本並んであり、オイルが漏れているのは、機体に近い内側の油圧ホースであったため、交換するには、外側の油圧ホースが邪魔になった。このため、被災者が、バケットの下方に入り、レンチを使って外側の油圧ホースの上部のナットを外したところ、油圧ホースが外れ、オイルが漏れ、急激に油圧が下がったため、バケットが降下し、アームと機体の前部に頭をはさまれた。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  安全ブロック等を使用しなかったこと
 油圧ホースの交換を行うためにバケットの下に立ち入るにもかかわらず、アームの降下による危険を防止するための安全支柱、安全ブロック等を使用しなかった。
2  作業開始前の点検を行っていなかったこと
 作業開始時に点検を行っていなかったため、オイル漏れに気付いたのは、作業を開始した後であった。
3  不具合が見つかった場合の対応など作業標準が定められていなかったこと
 トラクターショベルに不具合が生じた場合の対応方法が定められていなかったため、被災者が自らの判断で油圧ホースの交換を行ってしまった。
4  安全教育がなされていなかったこと
 被災者に対して、雇い入れ時の教育などは行われていなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  安全ブロック等の使用を徹底すること
 原則として、トラクターショベルのバケットを上げた状態で修理、点検等を行わないこととし、やむを得ずバケットを上げた状態で修理、点検等を行うときは、安全支柱、安全ブロック等を確実に使用させる。
2  作業前の点検を行うこと
 トラクターショベルを用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に点検を行う。
3  不具合が発生した際の作業標準を定めること
 不具合が発生した場合の対応などについて、作業標準を定め、労働者に周知徹底を図る。
4  十分な安全教育を行うこと
 労働者を雇い入れたときなどには、作業の危険性や作業手順などについて、十分に安全教育を行う。また、その後も計画的に教育を行う。