交流アーク溶接機を使用中に感電する
業種 | 造船業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 溶接装置 | |||||
災害の種類(事故の型) | 感電 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護措置・安全装置の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 不安全な放置 |
No.101283
発生状況
この災害は、交流アーク溶接機を用いて船体ブロックの溶接作業を行っていたところ、電撃防止装置の主接点が開閉不能となったため、感電したものである。 災害発生日、被災者は、午前中から交流アーク溶接機を使用して船体ブロックの組み立て作業を行っていた。なお、被災者は、同様の作業をこれまでにも行って経験があることから、当日は、作業方法について特に指示を受けていない。 そして、夕方になって、他の業者の労働者が片付け作業のため、作業室内に入ったところ、被災者が革手袋を両手に着用し、左手に溶接棒、右手に溶接棒ホルダーをもった状態で仰向けに倒れていた。なお、被災者の左腋部と左上腕部内側に溶接棒の形状に合致する電流斑(ヤケドの跡)が認められた。 被災者が使用していた交流アーク溶接機は、低抵抗始動型(始動感度1.5Ω)の交流アーク溶接機用自動電撃防止装置(以下「電撃防止装置」という。)が内蔵されたものであるが、約20年近くの長期間にわたって使用されてきたものであった。そして、溶接作業をしていたところ、電撃防止装置の主接点が、開閉不能となり、当該溶接機の二次側に常時80V程度の溶接機無負荷電圧が発生した。 このとき、被災者は80V程度の溶接機無負荷電圧の発生に気づかなかったため、革手袋を着用した被災者が溶接棒を溶接棒ホルダーの充電部に装着しようとしたか、または、誤って溶接棒ホルダーの充電部に人体の一部が接触したために感電したと推定される。 また、主接点が閉塞不能となった原因としては、長期にわたる使用により、接点間で繰り返し放電が発生し、消耗が進み、主接点が溶融して溶着状態になったことが考えられる。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 電撃防止装置の主接点が開閉不能となったこと 電撃防止装置の主接点が、長期間の使用による接点間での繰り返し放電のため溶融して溶着状態となったため、閉塞不能となった。 |
2 | 点検等を実施していなかったこと 使われていた交流アーク溶接機は約20年の長期間に渡って使用されてきたが、主接点も含め、定期的な検査や使用開始前の点検を実施していなかった。 |
3 | 労働者に対する安全教育がなされていなかったこと 労働者に対する安全教育がなされておらず、感電の危険性や感電防止措置についても何ら教えられていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 点検等を確実に実施すること 溶接機械の使用開始前に溶接作業者に電撃防止装置の外箱の設置状態、配線及び接続機器の被覆又は外装の損傷の有無、主接点の作動状態の確認などの点検を実施させると共に異常がある場合は、直ちに、補修又は取り替えを行う。 また、定期的に抵抗測定、主接点の作動及び表示灯の明暗などについて検査を行い、その結果を記録すると共に、異常がある場合は、直ちに、補修又は取り替えを行う。 | |
2 | 作業方法を定め、それに基づき作業を実施すること 作業内容や使用する機械などを踏まえ、適切な作業手順を定め、それに従い作業を行う。 | |
3 | 安全衛生教育を実施すること 労働者に対し、作業方法、感電の危険性、感電防止措置、などについて、安全教育を計画的に実施する。 |