フッ酸運搬車両からフッ酸貯槽への移送作業時に噴出したフッ酸を吸入
業種 | 一般港湾運送業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護措置・安全装置の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 職場的原因 | |||||
発生要因(管理) | 不安全な放置 |
No.101277
発生状況
この災害は、フッ酸運搬車両(濃度55.6%、フッ酸5m3)を運転し、納入先に搬入した時に発生した労働災害である。 当日、作業者AとBが、フッ酸運搬車両を納入先へ運搬した。納入先にて、屋外にある1号フッ酸貯槽(容量15m3)へ供給するよう指示を受けた。 1号フッ酸貯槽には、約8m3残っており、全てを入れる余裕がなかった。そこで、1号フッ酸貯槽への受入量を確保するために、1号フッ酸貯槽から2号フッ酸貯槽へフッ酸4m3を移送するための操作を行い、2号フッ酸貯槽の貯留量を12m3にさせた。 2号フッ酸貯槽への移送作業終了後、運搬車両からのフッ酸を1号フッ酸貯槽へ供給するための作業を開始した。 作業者Bは、1号フッ酸貯槽の受入フランジ閉止板を外し、フッ酸運搬車両にあるホースと受入配管を繋ぐための双方のフランジの仮締め作業を行っていた。その時、フランジ部からガス状のフッ酸が噴出し、作業者Bがフッ酸を吸入してしまった。 作業者Aは、作業者Bに作業の中止とともに退避するよう指示した。作業者Aは、付近の水道ホースを使用して1号のフッ酸貯槽のフランジ部とその周囲に水をかけた。 この時に作業者Aも噴出したフッ酸を吸入し、2名が休業災害を負った。 フッ酸は、フッ化水素酸とも呼ばれ、フッ化水素の水溶液であり、皮膚に接触すると、体内に容易に浸透する。刺激性が強く、吸入すると肺等への損傷を起こす。管理濃度は、フッ化水素として0.5ppmである。 なお、この物質は、特定化学物質第2類物質、特定第2類物質に該当する。今回被災したフッ酸運搬車両の運転手の作業者A、そして、乗務助手の作業者Bともに、特定化学物質等作業主任者の資格は有していなかった。 |
原因
1 | フッ酸貯槽内に圧力が残っていたこと、また、フッ酸受入手動バルブが良好に作動しない状態であったため、フッ酸が受入手動バルブから受入フランジ側の配管内に漏えいし、フランジの受入口から噴出したこと。これは、特定化学設備のバルブの接合部からのフッ酸の漏えい防止の措置を行っていなかったことも起因となる。 |
2 | フッ酸取扱い作業をする時に、呼吸用保護具を着用していなかったこと。 |
3 | 特定化学設備のバルブについて、週に一度の日常点検は実施していたものの、2年以内ごとに1回の定期的な検査を行っていなかったこと。 |
4 | フッ酸の取扱い作業をする際、特定化学物質等作業主任者を選任してその職務を行わせていなかったこと。 |
対策
1 | フッ酸貯槽内の残圧を完全に排除した後に受入フランジの閉止板を外し、フッ酸運搬車両のホースと受入配管へ繋ぐ作業を開始すること。また、受入手動バルブについては、良好に作動するものを使用すること。 | |
2 | フッ酸の取扱い作業をする際、呼吸用保護具を着用すること。 | |
3 | 特定化学設備に関しては、定期的な点検及び、検査を行うこと。 | |
4 | フッ酸を取扱う作業では、特定化学物質等作業主任者を選任し、その職務を行わせること。 |