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労働災害事例

ファーストフード店の厨房で調理中に3人が一酸化炭素中毒

ファーストフード店の厨房で調理中に3人が一酸化炭素中毒
業種 その他の飲食店
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の装置、設備
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:0人 休業者数:0人
不休者数:3人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 故障未修理
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.101273

発生状況

 この災害は、ファーストフード店の換気が不十分な厨房で調理中に3人が一酸化炭素中毒になったものである。
 この店では、災害発生の一週間前に換気用送風機の軸が破損して使用できなくなったが、そのまま営業は続けた。
 しかし、破損した翌日に店長が頭痛を感じたので、その2日後と3日後に扇風機を各1台購入して厨房に設置し、さらにその翌日には社長の指示で扇風機1台を追加購入するとともに、事務所にあった小型扇風機1台も持ち込み、合わせて4台の扇風機を稼働させながら厨房での作業を継続した。
 また、災害発生前日には、シェイクマシンが故障したのでZ社に修理を依頼した。
 当日、換気設備は、まだ修理されていなかったので、厨房奥の窓1か所を開け、その方向に4台の扇風機を向けて稼動させ、店長を含めた6人のスタッフで午前10時に開店した。
 なお、このとき厨房で稼動させていた調理器具は、揚げ物を調理するガスフライヤー2基、ハンバーガーなどを焼くガスグリドル1基であった。
 正午頃、Z社のメンテナンス担当者が来店して、前日依頼したシェイクマシンの修理作業を開始した。
この頃から来客が多くなり、厨房内のガス器具等をフル稼働させて調理を行っていたが、店長を含めスタッフ3人の気分が悪くなったものの、交代で休憩しながら営業を続けた。
 30分程経過した頃、シェイクマシンを修理していたZ社のメンテナンス担当者も気分が悪いと訴えたため、アルバイト店員の一人が救急車の出動を消防署に要請した。
 しかし、店長が取り消しを指示したため、いったんキャンセルしたが、数分後に消防署から確認の電話があったので、他のアルバイト店員が救急車の出動を要請した。
 その後、救急車が到着してアルバイト店員2名とZ社のメンテナンス担当者の3人が病院に搬送されたが、診察の結果、一酸化炭素中毒と診断された。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  厨房内に一酸化炭素が滞留したこと
 厨房に設置されていた換気設備が故障したのに、未修理の状態で扇風機を置いただけでプロパンガス器具3基をフル稼働させたため、ガス器具の不完全燃焼で発生した一酸化炭素ガスが厨房内に滞留した。
2  一酸化炭素中毒の予兆があったのに営業を続けたこと
 換気設備の故障を修理せず扇風機を稼動させただけで作業を続けていたときに、気分が悪くなるなどの一酸化炭素中毒の予兆があったのに店長は無理して営業を続けた。
 なお、一酸化炭素中毒の症状としては、0.04%程度の場合1〜2時間で前頭痛、2.5〜3.5時間で後頭痛、0.04%程度の場合20分間で頭痛・めまい・吐き気、2時間で死亡、0.32%程度の場合5〜10分間で頭痛・めまい、30分間で死亡、1.28%の場合1〜3分間で死亡すると言われている。
3  ガス警報装置の設置等がされていなかったこと
 厨房には、一酸化炭素を検知し警報を発する装置が設置されていなかった。
 また、アルバイト店員を含む従業員に、ガス器具の使用に伴い発生するおそれのある爆発火災、一酸化炭素中毒、酸素欠乏症等に関する安全衛生教育を実施していなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  換気設備が機能しない場合には店の営業を停止すること
 多くのガス(都市ガスまたはプロパンガス)器具を使用する食堂等の厨房では、換気装置が正常に機能することが不可欠であり、安易に扇風機で代替することなく、修理が終了するまで営業を停止する。
 このことは、顧客の安全・健康を確保する意味でも重要である。
2  換気設備の点検・補修等を確実に実施すること
 厨房内でガス器具に点火した際には、炎の状態を確認し、不完全燃焼を防止する。
 ガス器具、ガス警報装置、換気設備については、定期的な点検、作動テスト等を随時に実施し、異常がある場合には直ちに補修等を行ってその能力を維持する。また、排気口は定期的に清掃する。(安衛則第577条)
3  安全衛生教育を実施すること
 アルバイト店員等を含めすべての従業員に対して、一酸化炭素中毒及び酸素欠乏症等の有害性とその予防対策、ガス爆発の危険性と対策等について安全衛生教育を実施する。
 また、作業中に身体に異常又は異臭を感じた場合の上司・経営者への連絡方法を明確に定めて徹底するとともに、緊急時の避難・救命措置訓練を実施する。(安衛則第35条)