ブル・ドーザーの作業開始前点検を終えてエンジンを起動したときに、ブル・ドーザーが後進してひかれる
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 整地・運搬・積込み用機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | ブルトーザー等 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 身体機能 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置をはずす、無効にする |
No.101269
発生状況
この災害は、圃場整備建設工事現場において、ブル・ドーザーの作業開始前点検を行っていた被災者が、エンジンを始動したときにブル・ドーザーが後退したため、ブル・ドーザーにひかれたものである。 当日の朝、工事現場に到着した被災者と同僚1名は、それぞれが使用するブル・ドーザーの作業開始前点検を始めたが、被災者は点検しようとしていたブル・ドーザーの停止位置が傾斜地であったので、ブル・ドーザーを約3m後進させて平坦な地山の上に移動した。 その後、被災者は、ガバナ・レバーを押し下げてエンジンを止め、パーキングブレーキ・ノブを引かずに乗車席から降りて作業開始前点検をはじめた。 手順としては、まずエンジンオイルを補充し、次いで補給したオイル量をレベルゲージで行うためにクローラーの上に乗り、手を伸ばしてエンジンを始動したところ、ブル・ドーザーが後退し始めた。 そのため、被災者は、クローラーと運転席乗車用ステップとの間に巻き込まれたのちクローラーから地面に落下しブレードにひかれた。 なお、このブル・ドーザーは、クラッチを切らないとエンジンがかからない安全装置が備わっていたが、クラッチを切らなくても起動できる状態に改造されていた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 被災者がブル・ドーザーの機能の変更を知らなかったこと このブル・ドーザーは、以前はクラッチを切らないとエンジンが起動しない安全装置が備わっていた。 しかし、被災者の知らない間に電気系統が変更され、クラッチを切らなくてもエンジンが起動できるよう改造されていたのに、被災者はこの変更を知らなかった。 |
2 | 運転席を離れるときのブレーキ操作等を誤ったこと 被災者は、作業開始前点検を行うため運転席を降りるときに、前後進コントロール・レバー及びスピードコントロール・レバーをニュートラルの位置に戻さず、ガバナ・レバーを押し下げてエンジンを止め、パーキングブレーキ・ノブを引かずに降りたため、エンジンを始動させたときにブル・ドーザーが直ぐに後進を始めた。 なお、エンジンの始動をクローラーの上で行ったことも不適切であった。 |
3 | 作業開始前の点検要領を定めて徹底していなかったこと ブル・ドーザーの作業開始前の点検は日常的に行われていたが、運転者に任せており、会社として点検要領、作業手順を定め関係者に徹底していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 運転席から離れるときには、逸走防止措置等を確実に行うこと ブル・ドーザー等の車両系建設機械の運転者が運転位置から離れるときには、エンジンを止め、及び走行ブレーキを掛ける等の逸走防止措置を確実に行う。(安衛則第160条) |
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2 | 定期自主検査等を実施し必要な補修等を行うこと 車両系建設機械については、1年以内ごとに1回の定期自主検査(有資格者による特定自主検査)、1月以内ごとに1回の定期自主検査及び作業開始前点検を確実に実施し、必要な補修等を行う。また、補修等に伴って電気系統などの変更を行った場合には、関係者に徹底する。(安衛則第167〜171条) |
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3 | ブル・ドーザーの作業開始前点検要領等を運転者に徹底すること ブル・ドーザーの作業開始前点検要領及び補修の基準等を定め、運転者に周知徹底する。(安衛則第170条) |
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4 | 管理責任者を定め検査、補修等の管理を行わせること ブル・ドーザー等車両系建設機械の管理責任者を定め、定期自主検査の実施及び補修等管理を行わせる。 とくに、運転者等による構造、安全装置等の不正改造のないよう管理する。 |