製鋼工場の炉補修用耐火レンガの乾燥焼成設備に点火した時に爆発
業種 | 製鉄・製鋼・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 乾燥設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 憶測判断 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.101267
発生状況
この災害は、鋳込み装置内壁耐火煉瓦の製造を行っている製鋼工場の乾燥焼成設備で発生したものである。 この工場では、鋳込み装置の内壁耐火煉瓦(湯あたり煉瓦、堰押え煉瓦等)が一回の注ぎ込みで損耗するため、鋳込み工場の二階に簡単な煉瓦乾燥焼成設備を作って自社で煉瓦の供給を始めた。 この自社製煉瓦乾燥焼成設備は、当初は鉄製箱の上部からガスバーナーの炎を吹き付ける開放式のものであったが、高熱の炎のため鉄製箱が変形してしまったので、新たな煉瓦乾燥焼成設備(鉄製箱に耐火物の内張り、耐火物を内張りした蓋、側面にガスバーナー挿入孔、内容積900mm×1,200mm×830mm)を製作し、災害発生の2週間ほど前から使用を開始した。 当日、乾燥設備作業主任者である被災者は、早朝に出勤して司令室に行く途中に、煉瓦乾燥焼成設備のところに立ち寄り、LPガスバーナーに点火した後、バーナーを挿入孔に差込んで煉瓦乾燥焼成を開始し、司令室に向かった。 それから約10分後にこの作業場所に戻ったところ、ガスバーナーの火が消えていたので、ガスバーナーを挿入孔から引き出してガスバーナーに再度点火し、バーナーの火災先端部を挿入孔に近づけたところ、煉瓦乾燥焼成設備が爆発した。 そのため、被災者は、爆風で約2m飛ばされ転倒した。また、レンガ乾燥焼成設備の蓋も約1.6m飛ばされ、その一部が折れ曲がった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | ガスバーナーの火が消えたためLPガスが充満したこと LPガスを燃焼させているガスバーナーの火が消えた原因は不明であるが、火が消えた後(最大でも10分程度)もバーナーから熱源であるLPガスが煉瓦乾燥焼成設備内(燃焼室内)に放出され続けたため、燃焼室内にLPガスが滞留し爆発の雰囲気が形成されていた。 |
2 | 原因を調べずに再点火したバーナーを挿入したこと 被災者は乾燥設備作業主任者の資格を有してはいたが、ガスバーナーの火が消えた原因を調査することなく、ガスバーナーに再点火して挿入孔に入れようとした。 |
3 | 設備の製作にあたりリスクアセスメント等を実施しなかったこと この煉瓦乾燥焼成設備は自社製のものであるが、爆発危険のあるLPガスを熱源とするにもかかわらず、十分なリスクアセスメントを実施せず、また、ガスバーナーの火が消えた場合の爆発防止のための安全装置の設置等を行わなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | リスクアセスメントを実施すること LPガス等の可燃性ガスを熱源とする乾燥設備を製作するときには、多角的にリスクアセスメントを実施し、その結果に基づき危害防止のためのガス漏洩検知装置、換気装置、安全装置の設置等を行う。(安衛則第294条) |
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ガスバーナーに再点火するときの手順を定め関係者に徹底すること 炎が消えたバーナーに再点火する場合の炎が消えた原因の調査、周辺のガス濃度の測定、換気等に関する手順を定め、関係者に周知徹底する。(安衛則第296条) |
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3 | 乾燥設備作業主任者の職務の再確認を行うこと 乾燥設備作業主任者の資格を有する者であっても、法令に規定されている乾燥設備作業主任者の職務等を再確認するとともに、部下に対する安全衛生教育等を適切に実施する。(安衛則第298条) |