エレベーターに台車とともに搭乗した作業者が、中2階の床下と搬器との間にはさまれる
業種 | 水産食料品製造業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | エレベータ、リフト | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 欠陥のある機械、装置、工具、用具等を用いる |
No.101266
発生状況
この災害は、水産食料品製造業の冷凍庫内に設置されたエレベーターに台車とともに搭乗していた作業者が中2階の床下と搬器との間に身体をはさまれたものである。 当日、被災者は、注文を受けた商品を出庫するため手押しの台車を冷凍庫内に持って行き、台車とともにエレベーターに搭乗して上昇させたときに、搬器の外に出ていた身体が搬器と中2階の床下との間にはさまれた。 このエレベーター(積載荷重290kg、定格速度0.138m/毎秒、揚程3.7m、搬器の間口1.45m、奥行1.5m、高さ1.4mのロープ式)は、倒産した会社からこの会社が土地及び建物を購入したときから設置されていた。 また、エレベーターの昇降路及び搬器には囲い等がなく、身体が搬器の外に出てしまう構造であった。 会社の安全衛生管理の状況は、安全衛生推進者は選任されていたが、エレベーターの使用等についての作業手順はなく、安全衛生教育も実施されていなかった。 なお、エレベーターの巻上用のワイヤロープは、一定期間ごとに交換が行われていた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 搬器及び昇降路に囲い等を設けていなかったこと このエレベーターは、搬器への出入り口を除き、搬器の周囲及び天井に囲いが設けられておらず、作業者が搬器に搭乗すると身体の一部が外に出てしまうような構造となっていた。 |
2 | 荷物専用のエレベーターに搭乗させたこと このエレベーターは、その構造上、荷物専用のものであったが、会社はその使用について特段の指示や安全衛生教育も行わず、また、作業者もその危険を認識していなかった。 |
3 | エレベーターのメーカーが構造要件の具備を指導しなかったこと このエレベーターのメーカーは、定期的に巻き上げ用ワイヤロープの交換をしていたが、人が乗るエレベーターに必要な構造要件等について適切な指導を行っていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | エレベーターの構造規格を具備すること 積載荷重が0.25t以上のエレベーターは、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならないことになっているので、会社(設置者)は構造規格を満たさないものを使用させてはならない。(安衛法第42条、令第13条第17号、クレーン則第148条) とくに、搬器については、出入り口の部分を除き周囲及び天井に囲いが設けられていなければならない。(エレベーター構造規格第21条) また、エレベーターのファイナルリミットスイッチ、非常止めその他の安全装置が有効に機能するよう調整を行わなければならない。(クレーン則第138条) なお、積載荷重が1t以上のエレベーターを製造する者は、都道府県労働局長の許可を受けなければならない。(クレーン則第138条) |
|
2 | 定期自主検査を実施すること このエレベーターについては、1年ごと及び1月ごとに定期自主検査を実施し、必要な補修を行ったうえで使用させる。また、その記録を保存する。(クレーン則第154〜158条) |
|
3 | 安全衛生教育を実施すること エレベーターを操作する者などに対して、構造要件を満たさないエレベーターへの搭乗禁止を明確に指示するとともに、エレベーターの操作要領、危害防止措置等について安全衛生教育を実施する。 |