天井クレーンのペンダントスイッチの点検中に感電
業種 | 金属製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 感電 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 整備不良 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 通電中の電気装置の |
No.101265
発生状況
この災害は、金属製品の製造を行っている会社の天井クレーンを操作している被災者が、クレーンの操作に使用するペンダントスイッチの点検中に感電したものである。 当日、鉄骨材の溶接組み立てを担当する被災者が、鋼材をホイスト式天井クレーン(つり上げ荷重が2.8t)でつり上げていたところ、ペンダントスイッチのコードが巻き上げ用フックのシーブに巻きつきクレーンが動かなくなった。 そこで、被災者は、事務所に保管してある予備のペンダントスイッチを持ってきて、クレーンガーダ上でコンセントに差し込んで天井クレーンを操作し、鋼材を着地させるとともに、破損したペンダントスイッチを取り外した。 しかし、再びクレーンが作動しなくなったため、停電しないままドライバーを使用して交換したペンダントスイッチの中を点検しているときに交流214Vに触れ感電した。 保管場所には、新品の物のほか、修理済みの物も置かれており、持ち出しは自由であった。 被災者の服装は、デニム地の作業服、保護帽、ゴム底の安全靴(短靴)であった。 なお、被災者は、クレーン運転及びアーク溶接の特別教育、玉掛け技能講習を修了していたが、低圧充電電路の敷設若しくは修理の業務に係る特別教育は受けていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 通電のままペンダントスイッチの点検を行ったこと 被災者は、自分の判断で取り替えたペンダントスイッチの不具合点検を電源のコンセントに接続したまま実施したが、使用したドライバーは手持ち部分がビニール製で一定の絶縁性は有していたが電気工事用のものではなかった。 また、充電部分の点検を行うのに、絶縁用保護具(手袋等)を使用しなかった。 なお、通電のまま点検した理由は、コンセントへの電源の遮断を行うと、他のクレーンも停止してしまうためであった。 |
2 | 指名された者以外の者が点検を行ったこと クレーンの故障の修理は、検査担当の課長が行うこととなっていたが、電撃危険に関する知識のない被災者が独断で行った。 |
3 | クレーンの点検整備が不十分であったこと この災害の元々の原因は、ペンダントスイッチのコードがフックのシーブに巻きついて破損したことであり、定期自主検査などの際に漏れなく点検し不具合部分の整備を行っていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 電気設備等の点検補修等の作業は停電して行うこと 電気設備等(スイッチ等を含む)の点検・補修作業を行う場合には、停電(電路を開路する)して行う。また、他の者によるスイッチ等の投入を防止するため、スイッチ等は作業中、施錠しておくか、通電禁止に関する所要事項(停電時間、投入禁止の表示、責任者名等)を表示するか、監視人を配置する。(安衛則第339条) |
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2 | 絶縁用保護具を使用させること やむを得ず、低圧電路等を充電したままで作業を行う場合には、絶縁用保護具等(手袋等)や活線作業用器具を使用させる。(安衛則第346条) また、これらの絶縁用保護具等は、その日の作業を開始する前に点検する。(安衛則第352条) |
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3 | クレーンの電源回路の変更等を行うこと 複数のクレーンが設置されている場合、その電源回路が一つであると、故障時の修理等の際にすべてのクレーンを停止せざるを得なくなるので、それぞれ別個の電源回路に変更する。 また、クレーンの定期自主検査等については、漏れのないようチェックリスト等を用いて行うとともに、不具合部分は直ちに修理する。(クレーン則第34〜36条、第39条) |
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4 | 特別教育等を実施すること 低圧(直流750V・交流600V以下)の充電電路の修理の業務等に従事する者については、あらかじめ特別教育を実施し、指名する。(安衛則第36条第4号) また、修理作業時等に関する作業手順を定め、関係者に周知徹底する。 |