車両積載型移動式クレーンで鉄板を荷台に積み込む作業中、鉄板がフックより外れて落下
業種 | 道路貨物運送業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 玉掛用具 | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 省略行為 | |||||
発生要因(管理) | 欠陥のある機械、装置、工具、用具等を用いる |
No.101260
発生状況
この災害は、車両積載型移動式クレーンを使用して鉄板を車両の荷台に積載する作業中に、鉄板がフックより外れて落下し補助作業をしていた作業者に激突したものである。 この会社は、貨物の運送事業を行っており、当日、運行管理者である被災者は、作業者Aに対し、鉄板(6.1m×1.5m×20mm 質量約1.76t)の回収作業を行うとの説明をしたのち、車両積載型移動式クレーン(つり上げ荷重2.93t、定格荷重1.55t)を使用して作業を開始した。 作業は、作業者Aがクレーンの運転及び玉掛け作業を行い、被災者が荷を支える等の補助作業を行っていたが、途中で荷が動揺したため鉄板の穴からフックが外れて落下し、鉄板が被災者の方向に倒れた。 鉄板への玉掛けは、フック付きワイヤロープのフックを鉄板に設けてある穴に掛ける方法で行ったが、鉄板には2個の穴があったものの玉掛け用ワイヤロープが1本しかなかったため、1点つりで行った。なお、フックには外れ止めがついておらず、クレーンの定期自主検査(年次)は行われていたが、過負荷を防止する安全装置は付いていなかった。 また、玉掛け及びクレーンの運転をしていた作業者Aは、小型移動式クレーン運転技能講習及び玉掛け技能講習を修了していたが、運行管理者である被災者はどちらも修了してはいなかった。 なお、作業の途中、アウトリガーの下に敷いた角材が2度にわたり破損しており、その都度つり荷の動揺も認められた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 作業計画が不十分であったこと 移動式クレーンによる作業を行う前に、移動式クレーンの能力、玉掛け用具の数、作業方法、作業者の配置等についての作業計画の検討がなされていなかった。 とくに、フックに外れ止めが付いていない玉掛け用具(フック付きワイヤロープ)を使用したほか、フックの荷への掛りを十分に確認しなかった。 |
2 | 不適切な玉掛け用具を使用したこと 鉄板には2個の穴があいていたが、現場にはフックの外れ止めがない玉掛け用具を1本しか持ってきていなかったため、1本つりとした。 |
3 | 荷振れがあったのに作業を継続したこと 作業の途中で、アウトリガーの下の敷角の破損などによって荷振れが認められたのに、被災者を荷の側に位置させたまま作業を継続させた。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 作業計画を定め作業者に徹底すること 移動式クレーンによる作業については、荷重や作業半径に応じた能力、地盤に応じた鉄板等の敷設の要否、適正な玉掛け用具の種類と数などを含めた作業計画と安全な作業方法を定め、関係者に周知徹底する。(クレーン則第66条の2) |
|
2 | 適切な玉掛け用具を使用すること 玉掛け用具には、つり荷の種類、質量に応じた強度を有する適切なものを選定し、安全に荷を移動するために必要な長さ、本数を用意する。また、フックには必ず外れ止めが付いているものを使用する。また、一点つりを禁止し、必要な場合には介添えロープを使用する。(クレーン則第66条の3) |
|
3 | 安全衛生教育を実施すること 移動式クレーンによる作業については、運転者及び玉掛け者の資格(免許、技能講習、特別教育)の有無を必ず確認するとともに、付近で作業を行う者などに対してあらかじめ荷の運搬作業における危険性、立ち入り禁止などに関する安全衛生教育を実施する。 また、資格を有する移動式クレーンの運転者及び玉掛け作業者についても定期的に能力向上教育を実施する。(クレーン則第67、68、74条) |