職場のあんぜんサイト

  1. ホーム
  2. 労働災害事例
  3. 労働災害事例(検索結果詳細)

労働災害事例

次亜塩素酸ナトリウムの樹脂製タンクに誤って塩酸を入れ塩素ガスが発生し、塩素ガス中毒

次亜塩素酸ナトリウムの樹脂製タンクに誤って塩酸を入れ塩素ガスが発生し、塩素ガス中毒
業種 食料品製造業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 危険物、有害物等
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:−
不休者数:10人 行方不明者数:−
発生要因(物) 物の置き場所の不適切
発生要因(人) 憶測判断
発生要因(管理) その他

No.101257

発生状況

 工場2階リネン庫(2m×3m×高さ3m)には、電解水生成装置が設置されており、その脇にダンボールに梱包された補充用の薬剤を入れた樹脂製容器が混在して置かれていた。補充用薬剤は、通常、20L入りの次亜塩素酸ナトリウム及び10L入りの塩酸の容器が保管されているが、時として塩酸は20L入りの容器で納入されることもあった。
 電解水生成装置は、その下部に次亜塩素酸ナトリウム用樹脂製タンク及び塩酸用樹脂製タンクがあり、各々ホースで装置に接続されており、ポンプで両方の液のPhを調整しながら供給して電解水を精製するものである。
 この電解水生成装置に供給する次亜塩素酸ナトリウム用樹脂製タンクの残量が少なくなり、補充警報のブザーが鳴った。このブザーを聞いたA(指名されている補充担当者3名のうちの1人)が、リネン庫に保管されている次亜塩素酸ナトリウム(20L)と思って注入したところ、塩酸(20L)であったため、残存次亜塩素酸ナトリウムと塩酸が反応し、塩素ガスが発生、周辺にいた作業者14名が塩素ガスを吸入し中毒したものである。
 また、補充用樹脂製容器は、塩酸は10L容器、次亜塩素酸ナトリウムは20L容器が多く、補充担当者はこの補充用容器の大きさで種類を判別していたが、この時の在庫には塩酸20L容器も1箱保管されていた。
 しかし、補充したい次亜塩素酸ナトリウムの樹脂製容器は在庫切れで保管されていなかった。また、補充用樹脂製容器には両方とも表示がなく、梱包した段ボール箱の側面にのみ成分等が表示されていた。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  補充液の成分を確認しないで、次亜塩素酸ナトリウムと思って塩酸を補充したこと。
(1)  補充担当者が、電解水生成装置の取り扱い方法、操作方法、次亜塩素酸ナトリウムと塩酸が混触してはならないこと等の教育を受けていなかった。
(2)  補充担当者が、次亜塩素酸ナトリウムと塩酸が混触すると塩素ガスが発生し、塩素ガス吸入により中毒する危険があることを知らなかった。
(3)  補充用樹脂製容器の内容・成分を確認せず、容器の大きさで慣用的に内容成分を判断していた。
(4)  梱包箱に記されている成分等を確認せず、また梱包箱を外した樹脂製容器には、成分等が記載されていないので、梱包箱と樹脂製容器での成分の確認は、両方とも実施していなかった。
(5)  リネン庫に、次亜塩素酸ナトリウム用樹脂製容器と塩酸用樹脂製容器が、区分されず一緒に置かれていた。(各々区別して、指定された保管箇所に置かれていなかった。)
(6)  樹脂製容器の梱包箱の表示事項に対する認識・理解が低く、「食品添加物」と表示されていたこともあった。
(7)  次亜塩素酸ナトリウム用樹脂製容器の在庫が無かった。
2  塩素ガスが発生し、工場内に拡散したこと。
(1)  リネン庫の出入口に扉が無く、塩素ガスが作業者のいる工場内に拡散した。
(2)  リネン庫には、塩素ガスが発生したとき捕捉し、屋外に排出する設備が設置されていなかった。
3  工場内の作業者に、塩素ガスの危険性などの安全衛生教育がされていなかったこと。また、塩素ガスが発生した場合の緊急避難の方法について、教育訓練がされていなかったこと。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  補充担当者及び関係作業者に、電解水生成装置の取り扱い方法、操作方法、次亜塩素酸ナトリウムと塩酸を混触してはならないこと等の安全衛生教育を実施すること。
2  次亜塩素酸ナトリウム及び塩酸については、成分・含有量・人体に及ぼす作用・貯蔵又は取り扱い上の注意事項を梱包箱のほか、各々樹脂製容器1つ1つに表示しておくこと。
3  次亜塩素酸ナトリウム及び塩酸の樹脂製容器は、保管箇所を明記し、各々色分けし、区分保管しておくこと。また、保管数を記録・管理し、必要な数の在庫を確保しておくこと。
4  電解水生成装置設置場所(リネン庫)には、塩素ガスが発生したとき捕捉し、屋外に排出する設備を設けること。
5  工場内の作業者に、塩素ガスの危険性、発生した場合の緊急避難の方法などの教育訓練を実施しておくこと。