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労働災害事例

メチルインジウムを製造する工程において、アルゴン置換していた精留釜に空気が混入して爆発

メチルインジウムを製造する工程において、アルゴン置換していた精留釜に空気が混入して爆発
業種 無機・有機化学工業製品製造業
事業場規模 1000人以上
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の危険物、有害物等
災害の種類(事故の型) 爆発
被害者数
死亡者数:− 休業者数:−
不休者数:1人 行方不明者数:−
発生要因(物) 有害物のガス、蒸気、粉じん
発生要因(人) その他の心理的原因
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.101255

発生状況

 インジウムメタルから、メチルインジウムを製造する工程は大きく2つに分けられる。
 第1の工程は反応槽で、インジウムメタルを塩素化(塩化インジウム生成)、槽内を減圧・アルゴン置換して、さらに塩化カリウムを投入(錯化工程)、降温減圧後・昇温(蒸留工程)、精留釜に留出させている。
 第2の工程は精留釜で、フッ化カリウムを投入処理後、減圧・昇温(精留工程)、主留(粗メチルインジウム)を主留受器に流出させている。
 この精留釜に空気が混入し、メチルインジウムと空気が反応し爆発、飛散物により被災したものである。
 空気の混入は、精留釜に、粉体のフッ化カリウムを投入する際にあったものである。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  メチルインジウムは、[1]湿った空気に触れると可燃性ガス(メタン、エタン、水素)を発生、[2]空気に触れると反応・自然発火する危険を有しているが、空気が混入しメチルインジウムと反応したこと。
2  フッ化カリウム投入処理では、粉体フッ化カリウムが空気をかみ込み、粉体に含まれた空気が流入したこと。
 また、粉体により投入ホッパーに微少な傷・摩耗が生じ、空気が釜内に入ったこと。
3  フッ化カリウム投入処理で、[1]投入するフッ化カリウムの加熱乾燥、[2]仕込み投入前にホッパー内をアルゴンガスで置換、[3]アルゴンを吹き流しながらホッパーにフッ化カリウムを仕込む、[4]ホッパーのフランジを固定しアルゴンガスで加圧・30分間の気密テスト(「リークなし」の確認)、[5]真空減圧〜アルゴン常圧を3回繰り返しアルゴン置換、[6]ホッパー内を真空ポンプで引きながら加熱昇温、[7]真空減圧〜アルゴン常圧を3回繰り返しアルゴンで再置換、[8]ホッパーから反応槽に投入などの空気混入防止措置が十分でなかったこと。
4  釜内の圧力の異常上昇に対しては、破裂板が破裂し放散ダクトを経て外気に抜ける措置がとられていたが、メチルインジウム及び分解生成物インジウムメタルの融点(それぞれ89℃及び156℃)より、災害発生時の外気温(6.3℃)が低く、急激に冷やされ、放散ダクトに固化・付着し、円滑な放散を妨げたこと。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  空気の混入を防止すること。
(1)  投入するフッ化カリウムは、[1]投入前に加熱乾燥、[2]投入前にホッパー内をアルゴンガスで置換、[3]加圧状態とし、それを確認する監視設備を設置、[4]アルゴンを吹き流しながらホッパーにフッ化カリウムを仕込み投入する等により、空気が混入しないような措置の効果を確認し、空気が混入する場合は改善する。
(2)  投入弁が、粉体により傷・摩耗する箇所や原因を調べ、投入弁の傷・摩耗の防止措置が適切であることを確認するとともに、不適切な箇所は修復する。
2  放散ダクトは、単純で曲がりを少なくし、円滑な放散ができるように改善すること。
3  製造エリアと計測室、控室を隔壁で分離し、遠隔バルブ操作ができるようにすること。また、製造エリアに作業者が、点検等で臨時に立入する以外、立入らないようにすること。
4  空気の混入に対するリスクアセスメントを実施し、その結果を踏まえ安全作業標準書を作成すること。また、この作業標準書を活用し、関係作業者に対し、安全衛生教育を行うこと。