回収炉の補修後、燃焼再開時に炉内に漏洩していたコークス炉ガスに溶接火花が引火爆発し、被災
業種 | 製鉄・製鋼・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 整備不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.101253
発生状況
この災害は、製鉄工程で使用された製品洗浄用の塩酸回収炉(焙焼炉)の補修後、燃焼再開時に炉内に漏洩していた燃料のコークス炉ガス(コークス炉で発生する副生ガスで、主成分は水素、メタン、一酸化炭素)に溶接火花が引火、爆発し、3名が被災したものである。 焙焼炉は、直径7.7m、高さ11.6mの円筒形で上部から使用済塩酸(塩化鉄含有)を噴霧し、下部のバーナーでコークス炉ガスを燃焼させ、熱分解反応により塩化鉄を塩酸と酸化鉄に分解し、塩酸を回収するものである。 焙焼炉の補修は、コークス炉ガスの配管を取り替えるもので、災害発生の前日までに完了していた。 災害発生の日は、燃焼再開のため漏洩試験を実施し、次いで配管内の空気を窒素ガスで置換した(コークス炉ガスを直接注入すると爆発の危険がある)。 そのあと、今回の補修対象の4基のバーナーの先端までガスを充填することとし、火気使用禁止と退去のアナウンスと確認を行ってコークス炉と焙焼炉の間のガス受入れバルブを開にした。さらにバーナー先端までコークス炉ガスが充填されるようバーナー部のバルブを開け閉めし、水封式着火試験により充填を確認した。 コークス炉ガスの充填が完了したので、火気使用禁止と退去指示を解除し、付近で行っていた配管修繕のためのアーク溶接と塗装を含む工事を再開した。 燃焼再開のためバーナーに点火することとし、焙焼炉の1階にある起動スイッチを操作して炉内の残留したコークス炉ガスを排出する排気ブロワーを起動し、次いでバーナーに空気を送る空気ブロワーを起動した。さらに3階の点火スイッチを操作するために移動しようとしていたとき、爆発が発生した。爆発したのは、排気ブロワーを起動し約10分後、空気ブロワーを起動して約2分後であったが、点火スイッチを「ON」にする前であった。 爆発により炉の上部が吹き飛び、破片が周囲に飛散した。地上で片付けをしていた配管作業者が破片により重傷を負った。1階で起動スイッチを操作し3階に移動しようとしていた作業者と3階で塗装作業をしていた作業者が飛んできた破片に当り負傷した。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | コークス炉ガスを配管に充填する際に炉の周囲に設置されている4基のバーナーの先端まで充填するためにバルブを開け閉めしたが、今回の補修対象でない2基のバーナーのバルブが完全に閉まってなくコークス炉ガスが爆発までの約30分間漏洩し続けたこと。 |
2 | バルブが完全に閉まらなかったのは、作業者が確実に閉まっているかどうか確認しなかったことが直接の原因であるが、バルブの刷り合せが完全ではなかったこともその一因であると考えられること。 |
3 | 炉に直結する約17m離れた箇所で配管修理のための溶接作業をしており、炉内に滞留していたガスが排気ブロワーにより溶接箇所まで排出され、引火爆発したこと。 |
4 | 炉の上部には直径42.8cmの開放部があるため、空気より軽いコークス炉ガスがすぐに抜けてしまうと考え、炉内に滞留する可能性に全く配慮していなかったこと。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||||||
1 | コークス炉ガスのバルブの開閉については、チェックリストにより確実の行うこと。 | |||||
2 | 配管系統の漏洩試験について補修を実施した系統のみに行っているが、すべてのバーナーの系統についても行うこと。 | |||||
3 | バーナーの開閉弁(バルブ)について擦り合せ部分を定期自主検査時、補修時に整備すること。特にバルブを円滑の操作できるようにし、開閉状況を容易に確認できるように表示等を行うこと。 | |||||
4 |
バーナーの点火にあたっては、
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5 |
炉内にコークス炉ガスが漏洩している可能性を十分考慮し、関係者の現場における火気使用の許可の範囲を決定すること。 コークス炉ガスの危険性(爆発危険及び一酸化炭素中毒危険)について、関係労働者を含め十分な安全衛生教育を行うこと。 |