中古の第一種圧力容器を使用したところ、容器のふたが破壊して、容器内の熱水が水蒸気となって噴出し、被災
業種 | ゴム製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 圧力容器 | |||||
災害の種類(事故の型) | 破裂 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 整備不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.101252
発生状況
この災害は、加圧した圧力容器に医療関連部品である製品を入れて高温水による不純物等の洗浄作業を行っていたところ、突然圧力容器のふたが破壊して飛び、中の高温水が水蒸気となって噴出し、付近で作業を行っていた者が爆風等により被災したものである。 この圧力容器は、中古で購入した第一種圧力容器で、当該圧力容器に必要とされる労働安全衛生法に基づく性能検査は20年近く受検した記録がない。今回の使用に際しても法定検査を受けていない。内容積は、2.41m3で、ふたは、18本の放射棒(かんぬき)と胴のフランジ溝で密閉する方式のものである。 災害は、製品を入れた水槽を圧力容器に入れ、水槽に水を張り、ふたをしてから1.15MPaの蒸気を減圧弁で調整しながら導入し、圧力容器の温度が158度で圧力が0.6MPaであることを確認したときに、突然、圧力容器のふたが飛び、これにより解放された容器から蒸気が噴出したものである。なお、洗浄作業は、160度の高温水で60分間行う条件であることから、この条件に該当するかを試運転として行っていた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 最高使用圧力を超えた圧力をかけたこと。 圧力容器のふたが本体から外れ、ヒンジ部からもぎとられていることから、0.6ないし0.7MPaの内圧に対し、最高使用圧力が0.282MPaであったふたが耐えきれずに破壊したものである。 |
2 | 法定の検査を受けずに使用したこと。 圧力容器の法定検査を受けなくなってから20年近く経過しており、しかもこの度の使用に際し、設置の届け出や検査を受けていなかった。事業場には他の圧力容器も設置されており、ボイラー技士が存在するなど、当該圧力容器については届出等が必要であることは理解していたが、これを行わなかったものである。 |
3 | 圧力容器の強度の判断を誤り、安全弁の設定を耐圧強度以上としたこと。 中古の圧力容器を購入した時点で、管理者が十分な知識がないにもかかわらず事業場での洗浄作業の圧力に耐えると判断し、安全弁の設定圧力もその判断により設定した。 |
4 | 圧力容器の水圧試験においてふたの破損現象が現れるなどの危険な兆候が現れたにもかかわらず、圧力容器の使用を禁止しなかったこと。 災害発生の半月前に水圧試験を行っているが、第1回目のテストで0.8〜0.85MPaでふたが変形しており、その後の試験でも危険の兆候が表れていた。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 圧力容器について必要な検査等を受けること。 当該圧力容器は、内容積が2.41m3、胴の内径1,200mm、胴長2,100mmで、蒸気を注入し、大気圧を超える圧力で使用するものであるから、労働安全衛生法によって第一種圧力容器に該当する。したがって、一度廃止されたものを使用する場合には、使用検査や落成検査を受け、検査証を得なければならない。 事業場はこれらの受検等をすることなく使用していたが、受検の過程で、安全でない圧力容器が排除されれば、事故を未然に防ぐことができたのである。 |
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2 | 設備の導入に当たっては、社内で安全性等を検討する体制を整え、安全な設備の導入を確保すること。 本災害の要因として、一部の担当者が、法定受検をすると時間がかかる、容器が洗浄作業に必要な圧力を備えている等勝手な判断を行ったことがある。 事業場に設備を導入するに当たっては、当該設備を使用する関係の部門の他、安全衛生について専門的な知識を有する部門が参加して、当該設備の安全性、必要な法的手続き等について十分な検討が行われなければならない。 |