空気分離器内に充填された粒子状断熱剤の除去作業中、断熱剤に埋没し死亡
業種 | 機械器具設置工事業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の装置、設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 崩壊、倒壊 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | その他の土砂崩壊等 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 機械、装置、工具、用具等の選択を誤まる |
No.101242
発生状況
この災害は、空気分離装置の空気分離器内において、粒子状の断熱剤を除去する作業中に発生したものである。 空気分離装置は、空気を圧縮し、冷却液化し、蒸留することにより、酸素、窒素、アルゴンを分離・製造する装置で、空気吸入管、ターボ圧縮機、空気分離器等の機器で構成されている。 事業場では、この装置におけるアルゴンガスの製造能力が定期修繕前よりも低下したため、 空気分離器(縦10m、横6m、高さ70m)内に充填されている断熱剤を抜き取り、装置内の点検を行うことにした。断熱剤の抜取り作業は、工事を請け負ったZ社の現場責任者Aと作業者B〜Hの計8人により行われた。 災害発生当日、Aの指揮で、B〜Fの5人が空気分離器に5mの高さごとに設けられているマンホールのうち、地上高さ45mの箇所にあるマンホールから空気分離器内に入り、前日に引き続き、蛇腹ホース2本を使用して断熱剤の抜取り作業を開始した。また、GとHは空気分離器の外で吸引ポンプを操作していた。作業を開始して2時間が経過し、高さ8m分の断熱剤を抜き取ったところで、交替で休憩を取るため、BとCの2人だけで抜取り作業を行っていたとき、Bの足もとがすり鉢状になって断熱剤に埋もれ、Bはそのまま全身が断熱剤の中に埋没した。このとき、一緒に空気分離器内で断熱剤の抜取り作業をしていたCは、離れた位置にいたためBが埋没したことに気がつかなかった。Bは、休憩を終えて戻ったDからの連絡で駆けつけた他の作業者により救出され、病院に搬送されたが、死亡した。 災害発生時、Aは地上高さ40mの位置にあるマンホールから内部を監視していたが、空気分離器内の配管がじゃまで、Bの作業位置まで見渡せていなかった。 断熱剤は、非常に軽い粒状物質で、人が断熱剤の上にゆっくりと足を入れると膝まで埋まるようなものであった。 空気分離器内に入った作業者は、いずれもZ社が用意した安全ブロックに安全帯を掛けて作業をしていたが、この安全ブロックは、墜落等により急激に引かれるとロックするようになっていたが、ゆっくりと引かれた場合にはロックされないものであった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | ||
1 | 埋没しやすい断熱剤の上に乗って作業をしていたこと 作業者が足を入れると膝まで埋まるような断熱剤の上に乗って作業を行っていたことに加え、断熱剤の吸引によって作業者の足もとがすり鉢状になり、埋没しやすい状態になっていた。 |
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2 | 作業に適さない保護具を使用したこと 断熱剤への埋没を防止するために安全ブロックに安全帯を掛けて作業をしていたが、この安全ブロックは、墜落等によって身体が落下する速度が一定以上になるとロープをロックしてそれ以上の墜落を防止するもので、この作業のように落下の速度が比較的ゆっくりである作業には適していなかった。 |
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3 | 作業者の作業状況を監視人が把握できなかったこと 現場責任者がマンホールの位置から空気分離器内部の様子を監視していたが、内部の配管がじゃまで作業者の位置まで見渡せていなかったため、災害の発生を直ちに把握することができなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 断熱剤の上に乗る作業を改め、工程に応じた作業床を設置する等の作業方法とすること | |
2 | 上記1の作業方法をとることが困難である場合には、親綱を張り、作業に適した安全帯を使用させて行う作業方法とすること | |
3 | 監視人は、作業の進行とともに常に作業状況の把握ができる位置に立ち、異常が発生した場合は直ちに救助や緊急連絡ができるようにすること |