クレーンでつり上げた鋳型から木型を取り出す作業中、鋳型が崩落して死亡
業種 | 機械(精密機械を除く)器具製造業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 石、砂、砂利 | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | つり荷に触れ、下に入り又は近づく |
No.101233
発生状況
この災害は、自動車、工作機械等の部品を鋳造している事業場の造型工程で発生したものである。 災害発生当日、作業者Aは造型工程のリーダーとして木型を金枠にセットする段取り作業および鋳物砂の硬化後、鋳型から木型を外す型抜き作業を担当していた。また、鋳物砂を金枠内に流し込んで突き固める型込め作業は作業者Bが担当していた。 午後5時頃、Aは型抜き作業を行うため、型込め作業を終えた鋳型を金枠ごと玉掛けし、クレーン運転士Cに地切りの合図をした。地切りと同時に木型の一部が金枠から外れたため、Cは鋳型を確認し、砂にひびが入り不良品であることをAに知らせた。この後、CはAの合図により鋳型を所定の型抜き作業場所に移動し、2mの高さにつり上げた状態で待機していた。 この間、Aが鋳型の下に入り、鋳型の内部に埋もれて残っている木型を取り外すため専用工具で鋳型を突いていたところ、鋳型の一部が崩落し、Aは落下してきた砂のかたまり(1個の重さ約200kg)2個の下敷きになった。 型抜きの作業は、鋳型を反転して作業床に下ろし、鋳型の上側から行うように決められていたが、当日は作業が遅れ、終業時刻間際になっていたことに加え、鋳型が不良品であったことから、Aは作業工程を省略し、鋳型をつり上げたまま、鋳型の下から型抜き作業を行ったところ、鋳型が崩落して被災したものであった。 なお、この事業場では、造型工程で鋳型に不良が発生した場合等の非定常作業の作業手順書を定めていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | ||
1 | クレーンでつり上げられたつり荷の下で作業を行ったこと 作業者Aは、鋳型が崩壊する可能性があるにもかかわらず、クレーンでつり上げた鋳型の下へ立ち入って型抜き作業を行った。 |
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2 | 作業工程を省略したこと 当日は作業が遅れ、終業時刻間際になっていたことに加え、鋳型が不良品であったことから、作業者Aは、鋳型を反転し、鋳型の上側から木型を取り外すという工程を省き、クレーンでつり上げた鋳型の下側から型抜き作業を行った。 |
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3 | 非定常作業の作業手順書を定めていなかったこと この事業場では、造型工程で鋳型に不良が発生した場合等の非定常作業について、作業手順書を定めていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | クレーンのつり荷の下への立入禁止を徹底すること つり荷の下に立ち入ることを禁止し、これを作業者に教育するとともに作業場に表示して周知徹底する。 また、鋳型のように崩壊するおそれのある荷をつり上げる場合は、つり荷の高さを数十cmにとどめるようにする。なお、高くつり上げる必要がある場合は、つり荷の下部に仮設の底を取り付ける等、つり荷の内部の崩壊による落下防止等の措置を講じる。 |
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2 | 作業工程を変更しないこと 作業の遅れ等が発生しても、決められた作業工程を変更しないようにする。 止むを得ず作業工程を変更しなければならない場合は、事業場の責任者が作業工程の変更によって起こるおそれのある危険性や有害性を予測し、必要な措置を講じることが必要である。 |
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3 | 非定常作業を含むすべての作業について、作業手順書を作成し、作業者に周知徹底すること |