この災害は、マグネシウム成形機の金型の下部付近で発生した火災の初期消火中に、煙を吸い込んで被災したものである。
災害発生当日、作業者Aは、朝からマグネシウム合金製金属部品の成形作業に従事していた。午後の作業に取り掛かって約2時間たったとき、成形機の操作盤にマグネシウム合金の溶融温度のエラーが表示されたため、Aは成形機を停止して修理をしていたところ、成形機の金型の下から炎が発生した。Aは直ちに、火災報知器を操作するとともに、かけつけた作業者B〜Dの3人とマグネシウム火災用の消火器と砂を使って初期消火活動を行った。間もなく、消防車が到着したので、A〜Dの4人は屋外に退去したが、いずれも煙を吸い込んでおり、病院で手当てを受けた。
火災は、炎が発生した成形機の金型の下付近を中心に成形機およびコンクリート床面が焦げていたこと、成形機の周囲には、火元となるものはなかったこと、成形機は清掃を実施しておらず、成形機の表面や金型の周囲に機械油や離型剤が付着し、成形機の下の床面に相当量のほこりが堆積していたことから、600℃に加熱され溶融状態となった原料のマグネシウム合金が金型の外側にこぼれ、付着していた機械油や堆積していたほこり等に着火したものであった。
この事業場では、マグネシウム合金を火元とする火災の対応手順書が作成され、年1回消火訓練を実施していたが、消火活動時に煙を吸い込まないようにする呼吸用保護具は用意していなかった。 |