シャーの刃の交換作業中に上刃が落下し、上刃と下刃の間にはさまれて死亡
業種 | 製鉄・製鋼・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | シャー | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 分類不能 | |||||
発生要因(管理) | 安全措置の不履行 |
No.101203
発生状況
この災害は、鋼材の端面を剪断するシャーの刃の交換作業中に発生した。 刃の交換作業において上刃と下刃の取出しは、[1]上刃を寸動で所定の高さまで下降させる、[2]シャー内蔵の水圧シリンダーを上昇させて上刃を下から支える、[3]上刃を上刃ホルダーに固定している水圧クランプを外す、[4]水圧シリンダーを下降させて上刃を下刃に載せる、[5]下刃を下刃ホルダー固定している水圧クランプを外す、[6]上刃と下刃を牽引して側方に引き出す、という手順で行われる。 災害発生当日、この作業を作業者A〜Cの3人で開始したが、上記手順[2]の過程で、水圧シリンダーが作動しなかったことから、シャーの構造に詳しい作業者Dが原因を調査することになった。Dは水圧シリンダーの上下操作を数回行ったが、作動しなかった。そこでDが上刃と下刃の間に立ち入ってシリンダーの状況を確認していたところ、突然、上刃を上刃ホルダーに固定している水圧クランプが外れて上刃が落下し、Dは上刃と下刃の間にはさまれた。Dは直ちに救出されたが、既に死亡していた。 Dが原因調査のために数回、水圧シリンダーの上下操作を行った際、水圧ポンプ(水圧クランプと共用)は停止と再起動の繰返しにより過負荷となって停止し、水圧が0となっていた。上刃を上刃ホルダーに固定している水圧クランプは水圧を加えることにより保持され、水圧がなくなると外れる構造のものであったため、徐々に水圧クランプの保持力がなくなり、クランプが外れて上刃が落下したものである。 この工場では、シャーの刃の交換作業を定期的に行っており、作業手順書を作成していたが、作業中に水圧が0になる事態等のトラブル発生を想定したものではなかった。また、Dは上刃と下刃の間に立ち入る際、安全ブロックを使用していなかった。 |
原因
この災害の原因として次のようなことが考えられる。 | |
1 | 水圧クランプが水圧0でクランプが外れる構造であったこと 上刃を上刃ホルダーに固定している水圧クランプは水圧を加えることにより保持され、水圧がなくなると外れる構造のものであったため、水圧ポンプが過負荷となって停止し、水圧が0となったことにより、徐々に水圧クランプの保持力がなくなり、クランプが外れて上刃が落下した。 |
2 | 危険区域に作業者が立ち入る際、安全ブロックを使用していなかったこと Dは上刃と下刃の間に立ち入る際、安全ブロックを使用する等の上刃の落下を防止する措置を講じていなかった。 |
3 | 作業手順書がトラブル発生を想定したものではなかったこと この工場では、シャーの刃の交換作業を定期的に行っており、その作業手順書を作成していたが、作業中に水圧が0になる事態等のトラブル発生を想定したものではなかった。 |
対策
同種災害の防止のために次のような方策が考えられる。 | |
1 | 外れると作業者に危険を及ぼすおそれのあるクランプは水圧が0のときに保持する構造のものとすること 上刃を上刃ホルダーに固定している水圧クランプの動力源である水圧ポンプが動作不良、停電、過負荷等の理由で停止し、水圧が0となることは避けられない。外れると作業者に危険を及ぼすおそれのある水圧クランプは、本質的安全設計方策として、水圧0の状態でクランプが上刃をホルダーに保持し、水圧を加えるとクランプが外れる構造とする。 |
2 | 危険区域に作業者が立ち入る際には、安全ブロックの使用等の上刃の落下を防止する措置を講じること 作業者が上刃と下刃の間の危険区域に立ち入る際には、安全ブロックを使用する等、万一、上刃が落下しても作業者に危険が及ばない措置を講じることが必要である。 |
3 | トラブル発生を想定した作業手順書を作成すること シャーの刃替作業中に発生するトラブルを想定し、リスクアセスメントを実施して必要な措置を盛り込んだ作業手順書を作成するとともに、その内容を作業者に徹底する。 |