ケーブルクレーンの架線作業中、斜面を転落し死亡
業種 | 砂防工事業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 地山、岩石 | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 砂防工事 | ||||
災害の種類 | ガケ、斜面から墜落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 安全帯を備え付けていない | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.101196
発生状況
この災害は、砂防えん堤工事において、ケーブルクレーンの巻上げ索を盛り替える作業中に発生したものである。 災害発生当日、作業者A、B、Cの3名が現場に入り、ケーブルクレーンのワイヤロープ(巻上げ索と作業索)の点検、滑車の交換等の作業を行っていた。 一連の作業が終了した後、Aは作業道にある立木近くのワイヤロープの通り具合を確認したところ、立木の位置より谷側(斜面側)にワイヤロープを盛り替え(移動すること)た方がよいと判断した。そこで、Aはワイヤロープを盛り替えやすくするため、チェーンソーで立木の上部(1.7mの高さの位置)を切断し、作業索(直径6mm)を立木の谷側に盛り替えた後、巻上げ索(直径10mm)を持ち上げて谷側に移動させようとしたが、重さと張力のため立木の最上部をこえることができなかった。このためAは、Bと一緒になって巻上げ索を持ち上げ谷側に盛り替えたが、ワイヤロープを地面に下した勢いで体のバランスを崩し、作業道の路肩部分から植生された法面(のりめん)をおよそ80m転落し被災した。 Aは、保護帽は着用していたが転落の際に脱げ落ちており、安全帯は着用していなかった。 なお、当該作業では、作業指揮者が作業の指揮をとっていなかったことに加え、ケーブルクレーンの組立、解体等に関する作業手順書を作成しておらず、安全な作業方法について作業者に教育していなかった。 |
原因
この災害の原因として、次のようなことが考えられる。 | |
1 | ケーブルクレーンの架線に関する事前の作業計画が適切でなかったこと ケーブルクレーンの架線を行う際、事前に立木の位置等を考慮して無理のない位置に架線しておけばワイヤロープを盛り替える必要がなかった。 |
2 | 転落防止等の措置を講じていなかったこと 当該作業は山肌の作業道の平坦部とはいえ、作業道の路肩部ぎりぎりのところで無理な姿勢をとりながら行ったため、体のバランスを崩したものであり、しかも勾配が約40度〜50度ある斜面へと続く路肩部でありながら作業者に安全帯を着用させる等の措置を講じていなかった。 |
3 | 作業指揮者が作業の指揮をとっていなかったこと ケーブルクレーンの架線作業では、作業指揮者の指揮の下に作業を行う必要があるが、作業指揮者の選任は行われていなかった。 |
4 | 作業手順書の作成及び作業者への教育を行っていなかったこと ケーブルクレーンの組立・解体等に関する作業手順書の作成や作業者への教育を行っていなかった。 |
対策
同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | ケーブルクレーンの架線を行う場合は、事前に適切な作業計画を作成すること ケーブルクレーンを架設する際には、あらかじめ、ワイヤロープ(巻上げ索と作業索)の架線位置(元柱と先柱の設置位置)を検討し、立木等障害物の位置との離隔距離を十分に考慮した作業計画を立てる必要がある。 |
2 | 作業道の路肩部等で作業を行う場合には、適切な転落・墜落防止措置を講じること 作業道の路肩部等からの転落・墜落等のおそれがある場合には、あらかじめ、安全帯を作業者に着用させ、確実に立木等に安全帯を掛けてから作業を行う等の適切な転落・墜落防止措置を講じることが重要である。 |
3 | 作業指揮者の指揮の下に作業を行うこと ケーブルクレーンの組立・解体等の作業では、作業指揮者を選任し、その直接指揮の下に作業を行うことが必要である。 |
4 | 作業手順書の作成及び作業者への教育を行うこと ケーブルクレーンの組立・解体等については、安全な作業を行うための作業手順書を作成し、その内容を作業者に教育した上で行う必要がある。 |