金属部品のはい崩し中、はいが崩壊し、はいの下敷きになった
業種 | 機械(精密機械を除く)器具製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 金属材料 | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 物の置き場所の不適切 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101194
発生状況
この災害は、車両系建設機械や高所作業車の部品等を製造する工場において発生したものである。 災害発生当日、溶接した金属部品の研磨と仕上げを行う工程の職長Aは、高所作業車のバスケット(作業者が乗る作業床)の研磨作業を行うための段取りを行い、準備が整ったので部下の作業者B〜Dとともにバスケットの研磨作業を始めた。 その後、Aは、研磨作業を終えて仮塗装を施したバスケットを工場内の仮置場に移動するため、研磨作業はCとDに任せて、自分でフォークリフト(最大荷重2t)を運転し、Bを伴って仮置場に向かった。 AとBが向かった仮置場は、既に車両系建設機械の上部体の部品(1個900kg)のはいが5段(高さ約2.5m)に積まれ、持ち込んだバスケットを置くスペースがなかったため、このはいを崩して移動させることにし、いったんフォークリフトからバスケットを下ろし、積まれている部品の5段目をフォークリフトで移動した。 続いて、4段目を移動する準備のため、Aはフォークリフトから降りて、3段目の部品の端に乗り4段目の上部に残っていた桟(さん)木を取り除こうとしたところ、部品のはいが崩壊し、Aは崩壊したはいの下敷きになった。 この状況を見ていたBがすぐにAを救出して病院へ搬送したが、Aは約1時間後に死亡した。 AとBは、仮置場に積まれていた車両系建設機械の部品のはいを崩す際、はいの高さや安定の状況の確認、作業手順や役割分担の打合せ等を行わず、はいの崩壊防止の措置も講じないまま作業に臨んでいた。 また、この工場では製造した部品や半製品のはい付け・はい崩しの作業をたびたび行っていたが、はい付け・はい崩しの作業手順書を作成しておらず、はい作業主任者も選任していなかった。さらに、仮置場等、はい付け・はい崩しが行われる個所に、はいの上で作業するための昇降設備を用意していなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。 | |
1 | はいの上で作業するための昇降設備がなかったこと 仮置場には、はいの上で作業するための昇降設備がなかったため、Aは4段目の部品の上に残った桟木を取り除こうと部品の3段目の端に乗ったところ、はいが崩壊した。 |
2 | はい崩しの作業前にはいの状況を確認せず、作業手順や役割分担の打合せをしていなかったこと AとBは、既に積まれていた車両系建設機械の部品のはい崩し作業の前に、はいの高さや安定等の状況を確認せず、作業手順や役割分担の打合せもしていなかった。さらに、はい崩しの際に生じるおそれがある崩壊による危険を防止するための措置も講じていなかった。 |
3 | はい作業主任者を選任していなかったこと この工場では、はい付け・はい崩しをたびたび行っていたが、作業主任者を選任していなかった。 |
4 | 作業手順書を作成していなかったこと この工場では、はい付け・はい崩しの作業についての作業手順書を作成していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | はいの昇降設備を設けること 高さが床面から1.5mを超えるはいの上で作業を行う場合は、作業者が床面と作業個所との間を安全に昇降するための設備を設けることが必要である。 |
2 | はい作業の開始前にはいの状況を確認し、作業手順等の打合せを行うこと はい付け・はい崩しの作業開始前に、はいの高さや安定状況を確認し、作業手順、作業分担、予想される危険性又は有害性と対策、資格が必要な作業等について打合せを行う。 また、はい崩しに伴いはいの崩壊が予想される場合には、ロープで縛る、網を張る、くい止めを施す等の崩壊による危険を防止するための措置を講じることが必要である。 |
3 | はい作業主任者を選任すること 高さが床面から2mを超えるはいのはい付け・はい崩しの作業では、はい作業主任者技能講習を修了したもののうちから、はい作業主任者を選任し、次の事項を行わせる必要がある。 [1] 作業の方法及び順序を決定し、作業を直接指揮すること [2] 器具および工具を点検し、不良品を取り除くこと [3] 当該作業を行う個所を通行する作業者を安全に通行させるため、その者に必要な事項を指示すること [4] はい崩しの作業を行うときは、はいの崩壊の危険がないことを確認した後に当該作業の着手を指示すること [5] 作業者が床面と作業個所との間を安全に昇降するための設備および保護帽の使用状況を監視すること |
4 | 作業手順書を作成すること はい付け・はい崩しの作業について、安全な作業方法、役割分担、危険防止のための措置等を盛り込んだ作業手順書を作成するともに、作業者に対し作業手順書の内容を周知徹底する。 |