ドライクリーニングの溶剤に引火し、3名が火傷
業種 | クリーニング業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の装置、設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 憶測判断 | |||||
発生要因(管理) | 組合せては危険なものを混ぜる |
No.101184
発生状況
この災害は、クリーニング工場でドライクリーニング洗濯機を稼動中に石油系の溶剤に引火し、火災が発生し、労働者3名が火傷を負ったものである。 災害発生当日、午前9時から作業が開始され、工場長Aと作業者B、Cの3名が3台の洗濯機の運転を担当し、他の作業者2名が衣類の仕分け、アイロンがけ、袋詰めを行っていた。 午後は、Aが1人で洗濯機を運転していたところ、突然、1台の洗濯機が火を噴き、瞬く間に作業場全体が火に包まれた。 このとき、Aは、初期消火を行おうとしたが失敗し火傷を負った。さらに火は工場全体に広がり、逃げ遅れたBとCも火傷を負った。3人は、病院に搬送され、入院した。 火災が起きた洗濯機は、洗浄から乾燥までを1台で行うタイプのもので、この工場では洗浄用の溶剤として石油系のものを使用し、これに静電気除去剤を添加していた。工場では、石油系溶剤と静電気除去剤のMSDSを取り寄せていなかったため、それぞれの物性等を確認していなかった。そのため、静電気除去剤を添加する割合は目分量で行っていた。 また、洗濯機には、内部に静電気が発生すると警告ブザーを鳴らすセンサーがついていたが、災害発生時は故障しており作動しなかった。 なお、この工場では、初期消火、避難方法等の緊急時の措置を定めておらず、避難訓練も行っていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 洗濯機で発生した静電気による火花が、溶剤に引火したこと |
2 | 静電気を検出するセンサーが作動しなかったこと 火災を起こした洗濯機には、静電気を検出すると警告ブザーを鳴らすセンサーが取り付けられていたが、故障しており作動しなかった。 |
3 | 石油系溶剤に静電気除去剤を適正な割合で添加していなかったこと この工場では、使用している石油系溶剤と静電気除去剤のMSDSを取り寄せていないため、それぞれの物性などを確認していなかった。そのため、静電気を確実に除去できる適正な割合で静電気除去剤を添加していなかった。 |
4 | 緊急時の措置を定めていなかったこと 工場では、火災発生に備えた初期消火や避難方法等の緊急時の措置を定めておらず、避難訓練も行っていなかったため、逃げ遅れた作業者が負傷した。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 設備の点検マニュアルを作成し、確実に点検を実施すること 工場で使用する機械設備については、その付属品である安全装置や警報装置も含めて点検マニュアルを作成するとともに、点検マニュアルに基づいて点検を確実に実施し、常に正常に作動するよう保守管理する。 |
2 | 有機溶剤等の物性を把握し適切に使用すること 使用する有機溶剤、化学物質等については、MSDSを入手して物性等を把握する。さらに、把握した内容に基づき適切に使用することが重要である。 |
3 | 緊急時の措置について定め訓練しておくこと 火災発生に備えた初期消火や避難方法等災害発生時の対応についてマニュアルを作成するとともに、災害発生を想定した避難訓練を定期的に行い、緊急時の措置を作業者に周知徹底することが重要である。 |