手持ち式グラインダーで鋼板切断面のバリ取り作業中、回転中の研削といしが当たり死亡
業種 | その他の金属製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の金属加工用機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | 切れ、こすれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101171
発生状況
この災害は、ガス溶断機で切断した鋼板の切断面のバリ取り作業を手持ち式グラインダーで行っているときに発生したものである。 この工場では、縦横数mの大きな鋼板を天井走行クレーンで作業台に載せ、ガス溶断機で顧客から指定された寸法に切断し、その後、切断面の「ばり」を除去、研磨して出荷している。 災害発生当日、作業者Aは、朝から一人で鋼板の切断作業を行っていた。午前中に6m×2m、厚さ4cmの鋼板を高さ75cmの作業台に載せ、1.5m×1.5mに切リ出した後、午後からは鋼板の切断面のバリを手持ち式電気グラインダー(研削といしの外径18cm、厚さ6mm、最高回転数7,600rpm)で除去する作業を開始した。 午後2時半頃、Aの悲鳴が聞こえたので、他の場所にいた作業者Bが駆けつけてみると、Aが作業台の傍らで血を流し、倒れているのを見つけた。その後、Aは病院に搬送されたが、数日後に死亡した。 災害は、Aがグラインダーを使用したバリ取り作業中に、何らかの原因によりグラインダーが跳ね、その拍子にAの体に回転中の研削といしが当たったものであった。被災時、Aは、長袖・長ズボンの作業服を着用し、安全靴と軍手を使用していたが、それ以外の個人用保護具は使用していなかった。なお、Aが使用していたグラインダーの研削といしには破損個所はなく、研削といしには開口角180度の金属製の覆いが取り付けられていた。 Aが作業していた作業台の周囲には材料や道工具が積み上げられており、作業スペースは最も狭い個所では巾70cm程度であった。そのため、グラインダーが跳ねたとき、Aはこれをかわすことができなかった。 また、この工場では、作業者に対し安全衛生教育を実施していなかった。 |
原因
この災害は、使用中の手持ち式グラインダーが跳ね、回転中の研削といしが作業者の体に当たったために発生したものであるが、その原因として次のことが考えられる。 |
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1 | 作業場所が狭かったこと Aがバリ取り作業を行っていた作業台の周辺には材料や道工具が置かれており、Aは窮屈な場所で作業を行っていた。 そのため、グラインダーが跳ねたときに、身体を動かして避けることができなかった。 |
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2 | 回転中の研削といしとの接触を防ぐ個人用保護具を使用していなかったこと Aの服装は、綿製の作業服に安全靴と軍手であり、保護めがね、ゴム製の前垂れ、手甲等、回転中の研削といしとの接触による災害を防ぐ個人用保護具を使用していなかった。 |
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3 | 安全衛生教育を行っていなかったこと この工場では、作業者に対し、それぞれの作業に応じた基本的な安全衛生教育を実施していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 作業場所の整理整頓等を実施し、十分な広さの作業場所を確保すること 作業場所全体のレイアウトを見直して、安全な作業が行えるスペースの確保を行うことが必要である。 |
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2 | 安全な作業に必要な個人用保護具を定め、作業者に使用させること 手持ち式グラインダー等、高速回転する工具を使用する作業については、あらかじめ使用する工具による危険を評価し、必要な個人用保護具を定め、これを作業者に使用させる。 |
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3 | 作業者に安全衛生教育等を実施すること 作業者全員に対してそれぞれの作業に応じた基本的な安全衛生教育を実施する。 |