発電施設の脱硫塔上部から発火
業種 | 石油製品・石炭製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 整備不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101162
発生状況
この災害は、工場に設置されているガスタービン発電施設において発生したものである。 この工場では、製造過程で副産物として分解軽油・灯油が生成されるが、これを燃焼してガスタービンによる発電を行い、工場内で使用するほか電力会社に売電している。 発電施設は、燃焼室を備えたガスタービンと発電機のほか、排ガスの熱を利用して蒸気を発生させる廃熱ボイラーおよび排ガスを浄化する脱硫塔、電気集じん装置で構成されている。災害は、発電施設の定修工事を行った後、本運転を開始して4日目に脱硫塔で発生した。 災害発生当日、脱硫塔出口での排ガスの温度が上昇したので、原因を確かめるために、発電施設全体の運転を停止し、冷却運転に切り替えたが、その後も脱硫塔出口での排ガスの温度が上昇し続け、制限温度(70℃)を超えたため、自動冷却システムが作動し、脱硫塔上部から工業用水が散水された。しかし、排ガスの温度が下がらず、冷却システムが作動し続けたため、脱硫塔底部にたまった冷却水の水位が上昇し、あふれ出した。そこで、冷却システムを手動に切り替え、脱硫塔底部の水位を見ながら散水量を調節していた。 このとき、発電施設の運転は停止していたが、タービンを冷却するための送風が続けられ、廃熱ボイラーを通過するときにボイラーの余熱で加熱された空気が脱硫塔に流入し続けていた。そのため、脱硫塔出口での排ガス温度は次第に上昇して200℃を超え、脱硫塔上部のポリプロピレン製デミスター(ミスト回収装置)が発火した。この災害による人的被害はなかった。 災害が起きた発電施設は、2週間前に定修工事が行われ、その後の試運転中に、脱硫塔の内部のスプレーノズルから散水される冷却水の吐出量が減少して、脱硫塔内の温度が上昇するトラブルが発生していた。定修工事において脱硫塔の冷却水(水酸化ナトリウム水溶液)の循環ポンプのシール水を注水するバルブを閉じたまま試運転を行ったことが原因だと分かったので、バルブを開いて試運転を再開した。しかし、このトラブルにより、脱硫塔の充てん材に用いられていたポリプロピレンが一部変形して脱落し、そのかけらが冷却水の配管に吸い込まれて、冷却用スプレーノズルの目詰まりを起こしていた。そのため、本運転において冷却水量が減少し、脱硫塔内の温度上昇につながったものである。シール水の注水バルブの開閉表示は、バルブ設置個所のほか制御室にもなかった。 なお、工場では、本運転中や試運転中に起こる異常に対し、必要な措置対応を確認していなかった。 |
原因
この災害において、脱硫塔出口での排ガス温度が200℃を超えた原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | シール水の注水バルブを閉止したまま試運転を行ったこと 冷却水循環ポンプのシール水の注水バルブを定修工事中に閉止したまま試運転を行ったため、脱硫塔内の排ガス温度を低下させるために必要な冷却水の循環が停止し、脱硫塔の内部が高温になった。そのため、変形・脱落したポリプロピレン製の充てん材のかけらが冷却水の配管内に吸い込まれ、本運転開始後に冷却用スプレーノズルを徐々に閉塞させて脱硫塔内の温度上昇を引き起こした。 また、シール水の注水バルブの開閉表示が、バルブの設置個所および制御室のいずれにもなかったことも原因の一つである。 |
2 | 試運転時に異常が発生した際、周辺装置への影響を確認することなく、試運転を再開したこと 試運転時に脱硫塔内の温度が上昇した際、脱硫塔内の充填材の一部が変形・脱落していたが、これを確認することなく、試運転を再開した。 |
3 | 本運転中に発生した異常に対し、とるべき措置が確認されていなかったこと 脱硫塔底部にたまった冷却水があふれ出したため、冷却システムを自動から手動に切り替え、脱硫塔底部の冷却水量を見ながら散水量を調節したため、冷却能力が低下した。 また、脱硫塔出口での温度上昇により発電施設の運転は停止していたが、廃熱ボイラーの余熱で加熱された空気を脱硫塔に送り続けたため、脱硫塔内部の温度は上昇し続け発火につながった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 試運転の前に、改修工事の結果の確認を行うこと 発電施設の定修工事を行った場合には、改修工事の終了の確認を行うだけではなく、バルブ等については開閉の状態を点検し、運転可能な状態になっていることを確認した上で試運転を行う。 |
2 | 異常が発生したときの措置を含めた試運転時の操作手順書を作成すること 発電施設の試運転を実施する前に、操作手順、異常が発生した場合の措置等を含む適切な操作手順書を作成し、関係者全員に周知徹底する。 また、試運転中に異常が発生した場合には、応急措置のみを行って試運転を継続せず、運転を停止した上でその根本的な原因を解明して必要な対策を講じた後で試運転を再開する。 |
3 | 発電施設運転時に発生する異常に対し、必要な措置を確認しておくこと 発電施設を運転中に発生する異常とその対応措置について、あらかじめ確認しておき、施設の操作手順書に盛り込むとともに、関係作業者にその内容を周知徹底すること。万が一、異常が発生したときに、間違いなく適切な操作ができるよう、定期的に異常を想定した訓練を実施することも重要である。 |