スプレー缶入り洗浄剤で部品の洗浄中に爆発し、火傷を負う
業種 | 造船業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 可燃性のガス | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 作業手順の誤り | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.101148
発生状況
この災害は、船の機関室内で整備のため分解した船舶部品をスプレー缶入りの洗浄剤で洗浄中にガス爆発が発生したものである。 災害発生当日は、午前10時頃から職長Aと作業者B、Cの3人で請け負った船舶の修理作業にあたった。午前中にダイナモの交換を行い、昼休みの後、3人は機関室に入り、Aはセルモーターの交換、Bはエンジン・ボディの清掃、Cはエンジンの反対側でクラッチ・オイルの交換を行った。その後、BとCは、取り外した部品をスプレー缶入り洗浄剤で洗浄する作業に取りかかった。 BとCが洗浄作業を始めて約30分経ったとき、Aはバッテリーに接続されていたセルモーターを外そうとして、セルモーターの端子にスパナを当てた瞬間にスパークが生じ、爆発が起きた。このとき、洗浄剤のスプレー缶を持っていたBが最もひどい火傷を負い、AとCも軽い火傷を負った。 BとCが使用していたスプレー缶入りの洗浄剤は、噴射剤として約70%の液化石油ガスを含有し、洗浄剤成分としてシクロヘキサン、イソヘキサンを含有するものであり、その量は200g程であった。 また、3人が作業を行っていた機関室は、船舶(総トン数:約5t)のほぼ中央にあり、エンジン部を除いた気積は約8m3で、出入り口は2箇所あるものの、狭隘で通気が不十分な状態であった。職長Aは、洗浄剤から可燃性のガスが発生することを認識していたが、着火源となる火元がないことから爆発しないと思い、さらに当日の気温が低かったことから換気をしていなかった。 なお、この事業所が作成している作業手順書には、「可燃性溶剤を使用するときは、必ず、換気を行うこと」、「バッテリーに接続された電気機器に触るときは、必ず接続を切って行うこと」と記載されていたが、Aはこれを理解していなかった。 |
原因
この爆発災害の直接の原因は、気化して機関室内に充満した液化石油ガスにセルモーターとスパナの接触により生じたスパークの火花が点火したことによるが、このような状況となった間接の原因として考えられることは、次のとおりである。 | |
1 | 船舶の機関室という狭隘で通気不十分な場所であるにもかかわらず、作業手順書どおりの換気を行わずに可燃性のガスを含有する洗浄剤を使用したこと |
2 | 作業手順書では、電気機器に触るときは、バッテリーとの接続を切ってから作業することになっていたにもかかわらず、接続を切らないまま作業を行ったこと |
3 | 作業手順書の内容を職長らが把握していなかったこと |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 可燃性のガスが発生する作業を狭隘で通気不十分な場所で行うときは、必ず十分に換気を行うこと |
2 | バッテリー等の電源と接続された部品の取り外しを行うときは、必ず接続を切ってから作業を行うこと |
3 | 職長および作業者に対し安全衛生教育を実施し、作業手順書の内容を徹底すること |