自動車部品製造工場で発生した火災の消火活動で一酸化炭素(CO)中毒になる
業種 | 自動車・同付属品製造業 | |||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | その他の不安全な状態 | |||||
発生要因(人) | 分類不能 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.101147
発生状況
この災害は、自動車のボディを製造するZ社の工場で、塗装乾燥炉の排気ダクトと工場建屋の接合部分において発生した火災の消火活動中に発生したものである。 この塗装乾燥炉からの排気は、いったん排気処理装置に入り、排気中の有機溶剤等をバーナーで燃焼して除去した後、排気ダクトを通して工場建屋の屋根を抜けて屋外に排出されている。塗装乾燥炉は、工場を管理する事務所からの遠隔操作により自動運転されており、普段、塗装乾燥炉の周辺は無人であった。 災害発生当日は、工場内の床面の補修作業が行われており、塗装乾燥炉の近くにいた作業者Aが異臭に気づき、周囲を確認したところ、天井付近で煙が出ているのを発見した。Aは、直ちに事務所に連絡し、連絡を受けた事務所の呼びかけで、社内の各部署の作業者5人が集まった。 集まった5人は、煙と臭いの状況から、塗装乾燥炉の排気ダクトが接合する屋根のベニヤ板が燃えている可能性が高いと判断し、小型消火器を持って屋根の上に登った。しかし、煙が発生している個所は屋根の裏側であり、そのままでは消火剤を掛けることができないため、バールとドライバーで屋根材を剥がしてから消火することとした。 火災は約20分間燻り続いたが、排気ダクトに接合している屋根のベニヤ板を焦がしただけで鎮火した。鎮火後、5人はそれぞれの職場に戻ったが、そのうち作業者Bの意識が朦朧としてきたため、Bを病院に搬送したところ、一酸化炭素中毒と診断され、入院することとなった。Bは消火活動中、煙が発生している個所の風下側で屋根材をはがす作業を行っていた。 塗装乾燥炉の排気ダクトは、排気処理施設から垂直に立ち上がり、天井から屋根に抜けていたが、屋根の部材がベニヤ板であり、排気ダクトの熱(150〜350℃)に長期間晒されたことにより排気ダクトが接するベニヤ板が炭化していた。 Z社では、火災発生等の緊急事への対応マニュアルを作成しておらず、自衛消防団も組織されていなかった。そのため、集まった5人が組織的に活動するためのルールがなく、5人の中で最も年長の職長の指示により消火活動を行った。また、近くの消防署へは鎮火後に通報していた。 なお、Z社では、年に1回、消火訓練と避難訓練を実施していたが、火災時に発生する一酸化炭素による中毒が話題になったことはなく、社員に対し実施している安全衛生教育でも触れられたことはなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | ||
1 | 塗装乾燥炉の排気ダクトが接合する屋根のベニヤ板が炭化していたこと | |
2 | 火災発生等の緊急事態への対応マニュアルを作成していなかったこと | |
3 | 火災時に発生する一酸化炭素による中毒について、教育を行っていなかったこと |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | ||
1 | 高温となる排気ダクト周辺の建物の部材や構築物は、耐熱性のある材料・構造とすること 塗装乾燥炉の排気ダクトの温度を測定し、高温となる排気ダクト周辺の建物の部材や構築物は、測定した温度に応じた耐熱性のある材料・構造とする等、建物の構造を火災のおそれのないものとする。 |
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2 | 火災の発生等の緊急時の対応マニュアルを作成すること 火災の発生等を想定した緊急事態への対応マニュアルを作成する。緊急事態対応マニュアルには、想定される緊急事態に応じて、緊急事態が発生した場合に労働災害を防止するための措置として次の内容を盛り込むようにする。 |
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[1] | 各部署の役割、自衛消防団等の組織と指揮命令系統、社内外の緊急連絡先 | |
[2] | 消火・避難の方法、消火設備・避難設備の使用方法 | |
[3] | 各部署の役割、自衛消防団等の組織と指揮命令系統、社内外の緊急連絡先 | |
[4] | 被災者の救助・救急措置、救助設備の使用方法 | |
[5] | 避難訓練・通報訓練・消火訓練の実施 | |
3 | 火災時に発生する一酸化炭素による中毒について教育を行うこと 火災時に発生する一酸化炭素について、その危険性・有害性および中毒を防止する対策を作業者等、関係者全員に周知徹底するための教育を安全衛生教育等の際に行う。 |