食品加工工場で、魚を加工する網の洗浄槽に転落し死亡
業種 | 水産食料品製造業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 炉、窯 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置がない | |||||
発生要因(人) | 憶測判断 | |||||
発生要因(管理) | その他の不安全な行動 |
No.101142
発生状況
この災害は、食品加工工場で魚のみりん干を製造する際に使用する網を洗浄中に、作業者が足を滑らせて洗浄槽に転落したものである。 魚のみりん干を製造するZ社では、開いた魚を専用の網(縦25cm×横45cm×厚さ1mm)に乗せて味付けと乾燥を行っていた。この網は1回使用すると調味料と魚からしみ出た魚油で汚れるため、使用するたびに消毒洗浄することになっていた。 この消毒洗浄作業は、使用した網120枚を入れた合成樹脂性のコンテナ(縦40cm×横55cm×高さ30cm)を、70℃に加温した洗浄液(3%水酸化ナトリウム水溶液)が入ったステンレス製の洗浄槽(縦80cm×横150cm×深さ120cm)に入れて行う。 災害発生当日、責任者から網の消毒洗浄をするよう指示された作業者Aは、洗浄槽のバーナーに点火し、洗浄液の温度が上昇するのを待った。洗浄液の温度が70℃近くになったため、Aは、網が入ったコンテナを洗浄液の中に浸した後、約20分でコンテナを引き上げ、水洗場に運ぶと同時に2個目のコンテナを洗浄槽に浸した。同様にして作業を続け、3個目のコンテナを引き上げようとしたとき、足を滑らせて洗浄槽に転落した。 洗浄槽の脇で作業をしていた同僚の作業者がこれに気づき、直ちにAを洗浄槽から引き上げたが、火傷を負っており、搬送された病院で死亡した。洗浄槽の周囲は洗浄液や魚油がこぼれており、そのぬめりで滑りやすくなっていた。 Aが転落した洗浄槽は深さが120cmあるが、その半分以上が床に埋められており、床面から洗浄槽の上面までの高さは60cmしかなかった。また、網を入れたコンテナは、乾燥時は2kg程度であるが、洗浄槽に浸した後は10kg程度の重量となっていた。そのため、コンテナを洗浄槽に入れる作業は比較的楽であるのに対し、引き上げる作業は上半身をかがめて腕を伸ばす不安定な作業姿勢をとらなければならず、しかもその作業姿勢のまま重さ10kgのコンテナを引き上げなければならなかった。 なお、洗浄槽の周囲には作業者が転落することを防止するための柵等はなく、作業者が安全帯を使用するための設備もなかった。 |
原因
本災害の原因としては以下のことが考えられる。 | |
1 | 洗浄槽内の低い位置にあるコンテナを不安定な作業姿勢で引き上げようとしたこと |
2 | 転落防止のための柵等の設備がなかったこと |
3 | 洗浄槽の周辺が洗浄液や魚油等のぬめりのため滑りやすかったこと |
対策
同種災害の再発防止のためには、次のような対策が必要となる。 | |
1 | 洗浄槽にコンテナを出し入れする作業は、設備や作業方法を改善することにより、作業者が不安定な作業姿勢をとらなくてもよい方法で行わせること 具定例としては、天井からホイストクレーンやチェーンブロックでコンテナを上げ下げする作業方法が考えられる。 |
2 | 洗浄槽への転落を防止するための柵等を設けること 洗浄槽の周囲には、作業者が槽内へ転落することを防止するために床面から75cm以上の柵等を設ける必要がある。 なお、止むを得ず作業者が柵等の内側で作業を行う場合には、作業者が安全帯を使用するために必要な設備を設け、作業者に安全帯を適切に使用させなければならない。 |
3 | 洗浄槽周辺の床に滑り止めを施すこと 作業者が足を滑らし転倒、槽内への転落を防止するため、洗浄槽周辺の床は常に清掃するとともに、滑り止めを施す。また、作業者に滑りにくい靴を使用させることも必要である。 |