造船所で船体ブロックを組立て中、倒れた鋼板の下敷きになる
業種 | 造船業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 金属材料 | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 組立、工作の欠陥 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.101136
発生状況
この災害は、造船所の建造ドックで、貨物船の船体ブロックと鋼板を溶接する作業中に発生したものである。この船体ブロックは、完成すると幅18m、長さ11m、高さ1.5mの大きさのものになるが、組立工場では半分のもの2個を製作した後、建造ドックで鋼板を挟んで2つを合わせて完成させていた。 災害発生当日、組立工場における船体ブロックの組立てと溶接作業を請け負っている構内下請Z社の作業者Aと同僚の3人は、朝から工場内でブロック製作等に従事していた。午前中にZ社が担当する船体ブロックの製作が終了したので、午後からは別の構内下請Y社の作業者Bとその同僚の2人と合流して、半分のブロック2個を合わせ、組み立てる作業を行うことになった。 作業では、まず橋型クレーンで組立工場からブロックを建造ドック内の受台に移動した。Aは、このブロックとすでに置かれていた鋼板の上部にレバーブロックを取り付け、次いで両者を外側から5ヶ所で仮溶接した。 次いで、ブロックの内側から本溶接を行う準備をしていたとき、Bから本溶接の前にレバーブロックで鋼板を外側から引っ張るよう指示があったので、Y社の作業者が鋼板を引っ張ったところ、仮溶接個所が破断して鋼板が受台の下に落下し、近くにいたAとBが下敷きになった。その後、救急車で2人を病院に搬送したが、Aは死亡し、Bは2カ月間入院した。 作業手順書では、本溶接の前に鋼板の上部に取り付けていたレバーブロックを別の個所に取り付け直すことになっていたが、実際には、仮溶接のときに取り付けたレバーブロックを取り外したまま別のレバーブロックで鋼板を引っ張るという作業手順の誤りがあった。この作業は複数の下請の作業者によって行われたが、関係作業者が作業手順を確認しないまま作業を行っていた。 また、仮溶接の作業を行ったAに対し、Z社はアーク溶接等の業務に係る特別教育を実施していなかった。 さらに、この造船所では、多くの下請事業場の作業者が常駐していたが、混在作業による労働災害防止についての連絡調整等を十分に行っていなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のことが考えられる。 | |
1 | 安全な作業手順の確認と関係作業者への周知を行なわなかったこと |
2 | 特別教育を修了していない作業者にアーク溶接作業を行わせたこと |
3 | 下請混在作業における統括管理を実施していなかったこと |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 安全な作業手順を確認し、関係作業者に周知徹底すること 船体ブロックの溶接作業等を行う場合には、ブロックの移動に使用する機械の種類、溶接前の仮止め方法、鋼板の倒壊防止措置、仮溶接個所の数と長さ、本溶接前の準備作業と人員配置等を十分に検討して安全な作業手順を定め、下請を含めた関係作業者に周知徹底する。 また、作業責任者を指名して、作業の指揮、作業手順の遵守状況および災害防止措置の確認等を行わせる。 |
2 | 特別教育等の資格を確認し、資格を有するものに作業を行わせること アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等の作業に従事させる者については、あらかじめアーク溶接等の業務に係る特別教育の実施記録を確認し、資格を有する者に行わせる。 |
3 | 下請混在作業における統括管理を確実に実施すること 造船所では、発注元である親会社は、統括安全衛生責任者を選任するとともに、すべての請負人が参加する協議会の設置・運営、作業間の連絡調整、統括安全衛生責任者による作業場所の巡視、作業工程の打ち合わせ等を十分に行う。また、関係事業者が行う安全衛生教育への指導援助を行う。 |