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労働災害事例

建造中のコンテナ船に搭載中の船体ブロックが横転し、作業員が墜落

建造中のコンテナ船に搭載中の船体ブロックが横転し、作業員が墜落
業種 造船業
事業場規模 100〜299人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 仮設物、建築物、構築物等
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
被害者数
死亡者数:2人 休業者数:2人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 組立、工作の欠陥
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

No.101135

発生状況

 この災害は、造船工場で建造中のコンテナ船に搭載していた船体ブロックが横転し、ドック内で倒壊するとともに、作業者が墜落したものである。
 災害発生当日、この造船工場のドックでは、コンテナ船の各船体ブロックの組立作業が行われており、ドック内に位置決めされて置かれていた下ブロックの上に船体ブロックを搭載する作業が開始された。
 作業は、大型クレーン2基で船体ブロックをつり上げて下ブロックの上へ移動し、船体ブロックの底を下ブロックの受け金物の中に入れ、すでに据付済みの隣の船体ブロックと溶接が可能な位置まで調整して隣の船体ブロックと固縛するというものであった。
 作業開始後、船体ブロックを下ブロックの定位置に据え付け、固縛用冶具で船体ブロックを隣の船体ブロックに固縛する作業をはじめたところ、据え付けたばかりの船体ブロックが徐々に外側に傾いてドックの底に横転し、さらにドックの底にあった別の船体ブロックへ倒れかかった。
 そのため、横転した船体ブロックの上で、固縛の状況を確認していた作業者2人および仮設の手すりを取り付けていた作業者2人の計4人が25m下のドックの底に投げ出され、そのうち2人が死亡した。
 横転した船体ブロックは、重心の位置が底面の外側にあり、自立できない形状であるので、横転防止のための措置を十分に行う必要があった。しかし、隣の船体ブロックに固縛しようとしていた固縛用冶具は、もともと船体ブロックの位置を決めるための冶具であり、船体ブロックの横転防止としては十分な強度はなかったため、災害発生時に破断した。
 この造船工場では、船体ブロックの移動および取り付け作業の難易度をランク付けしており、横転する危険性が高い船体ブロックはクレーンで保持したままで本溶接を行うようになっていたが、そのランク付けは担当者に任されており、災害発生時にはクレーンによる保持は行っていなかった。
 また、この造船工場のドックでは、構内においては多数の重層下請の作業者が混在し、共同して作業を行っているが、災害発生当日は6事業場の作業者が混在し、船体ブロックの組立作業および船体ブロック上の仮設手すりの取り付け作業が同時に行われるなど、人員配置、作業指揮、作業の手順等について十分な連絡調整を行っていなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1  船体ブロックの横転防止措置が不十分であったこと
 重心の位置が底面の外側にあり、自立できない形状の船体ブロックを強度が不足している固縛用冶具により横転を防止しようとした。そのため、固縛用冶具が破断して、船体ブロックが横転した。
 また、作業難易度のランク付けの判断を担当者が誤り、クレーンによる船体ブロックの保持を行わずに、本溶接を行おうとしたことも原因のひとつである。
2  作業間の連絡調整が不十分であったこと
 6事業場に所属する作業者が混在して作業を行っているにもかかわらず、人員配置、作業指揮、作業の手順等について十分な連絡調整を行っていなかったため、固定されていない船体ブロックの上で仮設手すりの取り付け作業が行われ、被害が拡大した。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  船体ブロックの横転防止措置を検討し改善すること
 船体ブロックは、その部位によって形状および重心の位置がさまざまであり、かつ、かなりの重量物であるので、本溶接前の転倒防止措置について十分検討し、横転のおそれがない作業方法を決定し、これを関係作業者に周知徹底する。
 また、横転防止措置の実施状況について、一定の知識、技能を有する者を特定して確認を行わせることも重要である。
2  統括管理体制を整備し、実効ある管理を行うこと
 特定元方事業者である親会社(造船所)は、統括安全衛生責任者を選任するのみでなく、すべての下請業者による協議組織の設置と連絡調整の実施、職場巡視の実施等実効ある統括安全衛生管理を行わせる必要がある。
 さらに、異なる事業場に所属する作業者が混在または共同して作業を行う場合には、各作業毎に知識経験の豊富な指揮者を指名し、指揮を行わせる。