車両積載形トラッククレーンで鋼板の荷卸作業中、クレーンが転倒し運転者が負傷
業種 | 橋梁建設工事業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 転倒 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 橋梁建設工事 | ||||
災害の種類 | 移動式クレーン | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | コミュニケーションなど | |||||
発生要因(管理) | 荷等の積み過ぎ |
No.101132
発生状況
この災害は、自動車道路の建設工事現場において、車両積載形トラッククレーンの荷台に積まれた鋼板を荷卸作業中にトラッククレーンが転倒し、作業者1人が被災したものである。 災害発生当日、3次下請会社の作業者A〜Cの3人は、2次下請から、鋼板を資材置場から別の場所まで移動するよう指示を受け、0.5tの鋼板2枚、1.0tの鋼板1枚を車両積載形移動式トラッククレーン(つり上げ荷重2.3t)で荷台に積み込んだ。 そして、トラッククレーンを荷卸場所へ移動し、Aが運転席側のアウトリガーを、Bが助手席側のアウトリガーをそれぞれ引き出した。その後、職長のCが1.0tの鋼板に玉掛けし、Bが助手席側でクレーンを操作し、鋼板をつり上げて助手席側へ旋回した。 そのとき、トラッククレーンが助手席側に傾き始めたので、クレーンを操作していたBは荷台の後方へ逃げようとして段差から転落し基礎杭に衝突した。そこへ荷台に積まれたままの鋼板が崩れ落ちてきて、Bは基礎杭と鋼板との間にはさまれ、重傷を負った。 転倒したトラッククレーンには過負荷防止装置は装備されておらず、クレーンの安定性は荷重計から読み取る方式であった。 また、トラッククレーンを操作していたBは、クレーン特別教育を受講していたものの移動式クレーンにかかる運転資格はなかった。また、職長Cは小型移動式クレーン運転技能講習を修了していたが、AおよびBに指示するため、周囲の状況を確認しやすい荷台の上で作業していた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 荷重計で荷重を確認しなかったこと 転倒したトラッククレーンには過負荷防止装置は装備されておらず、クレーンの安定性は荷重計から読み取る方式のものであったが、荷重計の針が振れて読み取りにくく、安全な荷重であることの確認が困難であった。 |
2 | つり上げ荷重が過荷重であったこと トラッククレーンのつり上げ荷重は、転倒する直前には、その作業半径から0.65t程度であったが、つり荷は1.0tであり、過荷重の状態であった。なお、積み込みは荷台後方より行ったので、過荷重状態でも限界転倒モーメントを超えることはなかった。 |
3 | 運転資格のない者にトラッククレーンの運転をさせたこと 職長Cは、トラッククレーンを運転資格のないBに運転させた。Bは、トラッククレーンの特性についての知識と技能に欠けていたため、災害の発生につながった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 過荷重とならないよう荷重計を確認しながら作業を行うこと 荷重計を確認しながら作業を行うとともに、荷重計は読み取りやすいよう、日頃から点検・修理を行っておく。 |
2 | 荷の重さと作業半径に適したクレーンを使用すること 移動式クレーンを使用して重量物を運搬する場合には、荷の重さ、運搬経路、作業半径、つり上げの高さなどをあらかじめ検討し、過荷重にならないようなつり上げ能力を有するクレーンを配置する。また、過負荷防止装置を装備したクレーンを配置することも重要である。 |
3 | 移動式クレーンの運転は資格を有する者に行わせすること 職長は作業指示の際、無資格者に移動式クレーンを運転させないようにする。 また、元方事業者等が移動式クレーンの運転者の資格の有無の確認をすることも重要である。 |