建造中のバラ積み運搬船の船倉内で吹き付け塗装中に爆発し、作業者2人が死亡
業種 | 造船業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.101130
発生状況
この災害は、建造中のバラ積み運搬船の船倉内で吹き付け塗装中に爆発が発生したものである。 この船は、船倉が7つあり、それぞれ隔壁で仕切られる構造となっている。災害発生当日、最も船尾側になる7番船倉とその隣の6番船倉の内部の吹き付け塗装作業が予定されていた。船倉を仕切る隔壁の下部には、両側の船倉に通じる開口部が数カ所ずつ開いていた。6番船倉内の隔壁の下部の塗装を始めて1時間ほど経過したとき、6番船倉内で爆発が起き、爆風は隔壁の下部構造体を吹き抜けて隣接する5番船倉および7番船倉に達した。このとき、隔壁の塗装作業を行っていた下請業者の作業者のうち2人が爆風の衝撃により死亡し、1人が火傷を負い入院した。また、被災者を救助しようとした元請業者の作業者1人が一酸化炭素中毒になった。 爆発発生時に行われていた塗装作業では、塗料にキシレン、エチルベンセンおよびイソブチルアルコールが、硬化剤にトルエン、キシレン等が、溶剤にトルエン、キシレン、イソプロピルアルコール等が、含まれるものを使用していた。吹き付け塗装を行っていた作業場所には、空気ホースを用いて船倉の外から送気を行っていたものの、船倉内の換気は十分ではなかった。そのため、これら有機溶剤の蒸気が船倉内に滞留していた。 爆発発生時には、既に塗装作業が終了していた6番船倉内で、高所作業車を使用して、午前中の塗装作業に用いた足場を固定していた金属製の部材のガス溶断作業が行われていた。このガス溶断の火花が落ちて、船底に溜まっていた有機溶剤蒸気に引火し、爆発したものである。 また、災害が発生した運搬船の建造作業では、特定元方事業者が行うべき作業間の連絡・調整等の安全衛生管理は十分ではなかった。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 船倉内に有機溶剤の蒸気が滞留していたこと 船倉内には複数の換気ファンによる換気を行っていたが、有機溶剤の使用量に比べ送気量が十分ではなく、また、排気は強制排気ではなく自然排気にまかせていた。このため、塗装作業が行われていた船倉内部には爆発範囲にある有機溶剤の蒸気が滞留していた。 |
2 | 火花を発生させるガス溶断の作業を行っていたこと 6番船倉内では高所作業車上でガス溶断作業を行っており、その火花が落下し着火源となった。 |
3 | 作業間の連絡調整等の安全衛生管理が十分でなかったこと 特定元方事業者による、下請を含めた適切な作業間の連絡・調整や関係作業者に対する安全衛生教育の実施は十分ではなかった。このため、有機溶剤の蒸気が滞留していたにもかかわらず、作業者が危険性を認識できずにガス溶断作業を行った。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 船倉内部の換気を十分に行うこと 船倉内部、隔壁内部などの通風が十分でない場所で可燃性の有機溶剤を含有する塗料などを用いて塗装作業を行う場合には、消費される有機溶剤の量を確認し、内部空間の有機溶剤の蒸気などが爆発限界に達することのないよう、十分な強制換気を行う。 この場合、換気ファンは、防爆性能のあるものを使用する。 |
2 | 点火源となるおそれのある作業を禁止すること 可燃性の有機溶剤を使用した塗装作業を行う場所やその近くでは、ガスによる溶断・溶接またはアーク溶接などの点火源となる作業を行うことを禁止する。 |
3 | 作業間の連絡調整等の安全衛生管理を十分に行うこと 特定元方事業者は、下請を含めた適切な作業間の連絡及び調整を行う。特に、可燃性の有機溶剤を含有するものを用いた作業を行っている場所およびその付近では、マッチ、ライター等の持込みおよび点火源となる電気機械器具の持込みを禁止する。 また、関係作業に従事する作業者に対して、爆発危険とその防止対策について安全衛生教育を実施する。 |